目次



<家計における「住居費」の考え方> <住宅ローン控除、築年数要件の起算日> <中古住宅購入時の税制上の注意点> <連生団信は必要か?> <不動産投資は「不労所得」か?> <医療費控除を忘れずに> <ふるさと納税と確定申告> <賃貸物件の火災保険> <住宅総合保険の内容を把握していますか?> <住宅取得等資金贈与の非課税特例について> <不動産を相続したとき考えること③> <不動産を相続したとき考えること②> <不動産を相続したとき考えること①> <住宅ローン控除の居住要件> <住宅購入と頭金③> <住宅購入と頭金②> <住宅購入と頭金①> <家計簿のつけ方> <住宅は「購入」か「賃貸」か、どちらがいい?③> <住宅は「購入」か「賃貸」か、どちらがいい?②> <住宅は「購入」か「賃貸」か、どちらがいい?> <相続した空家の譲渡所得控除について> <不動産所得の事業的規模とは> <中古取得した建物の減価償却> <「被相続人居住用家屋等確認書」の取得について> <譲渡益が出たら「ふるさと納税」を> <小規模宅地等特例の注意点> <定年退職後すぐに不動産を売却するなら> <扶養控除対象者が不動産を売却した場合> <健康保険の扶養家族が不動産を売却した場合> <譲渡所得の申告時に必要な建物の価格> <平成29年度 路線価> <つなぎ融資と団体信用生命保険> <数次相続と相続登記> <新築住宅購入後の固定資産税> <不動産譲渡所得と損益通算> <譲渡所得の計算方法:長期と短期の区別> <譲渡所得の計算方法> <住宅取得等資金贈与の非課税特例:贈与のタイミング> <年金受給資格改正> <不動産売却後の国民健康保険料> <相続した空家の譲渡所得控除について>
他サイトに執筆した記事はコラム一覧からご確認ください。

<注意事項>*********************************
・税制は都度変わります。適用要件や期間も変わることがあります。
・コラムは執筆時の条件に基づいて記載しています。
・税制における特例は他の特例等と併用できる場合もあれば選択適用の場合もあります。

<家計における「住居費」の考え方> 2020.8.23

「家賃は収入の3割以内が目安」
「住宅ローンの返済額は年収の3割以内におさえるべき」

こういった言葉を耳にしたことはないでしょうか。
一般論としては問題のない考え方でしょうが、これを杓子定規として利用するのは望ましくありません。

「収入」や「年収」といった基準が「額面」なのか「手取り」なのかによって
数字が大きく変わるということもありますが、それ以外にも見落としが発生するケースがあります。

具体例を用いて比較してみましょう。
(金額は全て手取り額とします)

①月収:20万円
 ボーナス:30万円×2回/年
 年収:300万円

②月収:40万円
 ボーナス:80万円×2回/年
 年収:640万円

③月収:50万円
 ボーナス:なし
 年収:600万円

それぞれ、
・月収の3割
・年収の3割(カッコ内、月額換算)
を表すと以下のようになります。


月収の3割:6万円
年収の3割:90万円(月額換算:7.5万円)


月収の3割:12万円
年収の3割:192万円(月額換算:16万円)


月収の3割:15万円
年収の3割:180万円(月額換算:15万円)

ボーナスの有無や金額によって、年収ベースと月収ベースで3割のラインが変わるのは当然ですね。

今度は、上記の「3割」を除いた残りの金額を明示してみましょう。


月収の残高:14万円
年収の残高:210万円(月額換算:17.5万円)


月収の残高:28万円
年収の残高:448万円(月額換算:37.3万円)


月収の残高:35万円
年収の残高:420万円(月額換算:35万円)

これもごく当然ですが、それぞれ「7割」の金額が残高となります。

さて、ここからが重要なポイントです。

手取り収入(=可処分所得)の振り分けとして、「住居費」以外にも必須項目があるはずです。
例えば
、 ・食費
・水道光熱費
・通信費
・被服費
・教育費
・保険料
・小遣い

など、それぞれの生活スタイルによって金額の多寡も項目の要・不要も異なるでしょうが、
住居費以外にどういったお金がどれくらい必要かということを考えなければなりません。
また、長期的な視点に立つと、毎月の収入から、もしくは年間の収入から貯蓄をする必要も出てくるのではないでしょうか。

これを先ほどの具体例に当てはめてみましょう。


食費:4万
水道光熱費:1.5万
通信費:1万
被服費:1万
教育費:2万
保険料:0.5万
小遣い:2万
貯蓄:2万

小計:14万円

住居費が月収の3割(6万)とすると、月間収支はプラスマイナス0、年間では60万円プラスとなります(=ボーナスは手つかず)。
住居費が年収の3割(7.5万)とすると、月間収支はマイナス1.5万、年間では42万円プラスとなります。
毎月の貯蓄と年間の収支を合わせると、前者は84万円、後者は66万円の貯蓄増ということです。

では、次のパターンはどうでしょうか。


食費:8万
水道光熱費:3万
通信費:3万
被服費:3万
教育費:6万
保険料:4万
小遣い:6万
貯蓄:0万

小計:33万円

住居費が月収の3割(12万)とすると、月間収支はマイナス5、年間では100万円プラスとなります。
住居費が年収の3割(16万)とすると、月間収支はマイナス9万、年間では52万円プラスとなります。
毎月の貯蓄はありませんので、前者は100万円、後者は52万円の貯蓄増ということです。


食費:8万
水道光熱費:3万
通信費:3万
被服費:3万
教育費:8万
保険料:6万
小遣い:5万
貯蓄:0万

小計:36万円

このパターンはボーナスなしなので年収ベースも月収ベースも同じでしたね。
つまり、住居費が収入の3割(15万)とすると、月間収支はマイナス1万、年間でマイナス12万となります。
毎月の貯蓄もできていませんので年間収支は12万円の赤字です。

さて、3パターンご覧いただきましたが、いかがでしょうか。
①②のように年間収支がプラスであればとりあえずは問題ないように見えます。
しかし、①のパターンは月間収支をプラスマイナスゼロにするために「無理やり」生活費を切り詰めているのかもしれません。
また、年間の貯蓄増が長期的な資金計画(教育資金や老後資金など)に十分な金額かどうかもわかりません。

反対に、表面的には③のような赤字の状態は健全な家計とは言えないでしょう。
③のパターンで年間収支の黒字化を目指すのであれば、食費などのコストを月1万円切り詰めるという方法もありますが、
住居費を14万円にすればその他の項目は維持できますし、13万円まで下げれば貯蓄に回すことも可能です。
ただ、この赤字状態が一過性のもの(例えばこの数年だけ教育費負担が著しく増えている、など)であれば、
それほど過敏になる必要はないかもしれません。

つまり、

1、長期的な視点での資金計画(ライフプランニング)
2、単年度の収支管理

の両面から適正な家計を考える必要があります。
そうすることで、

「住居費が収入の何割であれば適正か」

というよりは、

「自分の家計にとって、住居費として負担できる金額はいくらか」

と考える方がより重要であることが分かるでしょう。

結果的にそれが3割程度の金額に落ち着くかもしれませんし、もっと低い金額になるかもしれません。
反対に、余裕があればそれ以上の負担に耐えられるケースもあるでしょう。
これも単年度でのみ考えるのではなく、長期的な視点で見ることが肝心です。

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<住宅ローン控除、築年数要件の起算日> 2020.5.8

中古住宅を購入するとき、判断基準の一つに「住宅ローン控除が使えるかどうか」というポイントがあります。
というのも、住宅ローン控除の適用要件には、次のような要件があるからです。
(本稿ではそれ以外の要件を無視しています)

「家屋が建築された日からその取得の日までの期間が20年
(マンションなどの耐火建築物の建物の場合には25年)以下であること」

木造の戸建てであれば築後20年以内、鉄筋コンクリート造の分譲マンションなら築後25年以内であれば大丈夫、ということです。

例えば築10年の木造の中古戸建を買う場合、
あるいは築15年の鉄筋コンクリート造のマンション1室を買う場合などは何の問題もありません。

では、築20年の木造戸建て、あるいは築25年の鉄筋コンクリート造の分譲マンションを買う場合はどうでしょうか。

この場合、問題になるのが築年数の起算日です。

上記要件の通り、期間の始期は「家屋が建築された日」で、終期は「その取得の日」となっています。
税法でよくある年末(12月31日)や年度末(3月31日)に影響されませんので注意してください。

さて、「取得の日」についてですが、不動産を購入する場合、まず売買契約をしてから、
住宅ローンの本審査を通し、決済・引渡しに至るというのが通常の流れです。
このうち、取得の日となるのは「決済・引渡し」の日です。
というのも、所有権の移転及びそれに伴う所有権移転登記の日がこのタイミングで行われるからです。
登記簿謄本上の登記原因欄に「何年何月何日 売買」と記載される日が「取得の日」となります。

一方、「家屋が建築された日」についてはどう判断するのでしょうか。

これも登記簿謄本で確認することができますが、表題部に記載されている登記原因「何年何月何日 新築」という日付で判断します。
カッコ内に登記の日付が記載されていることもありますが、あくまでも原因欄の日付で判断するということです。
完了検査の日付や不動産業者が作る物件資料などの日付が違っていたとしても、
税務署はあくまでも謄本の情報をもとに判断しますので、注意してください。

上記をもとに、具体例を考えてみましょう。
なお、分かりやすいように西暦表記に置き換えていますが、実際は元号で表記されます。

木造戸建 表題部登記原因「2000年6月25日 新築」

この物件を購入する場合、所有権移転日が2020年6月24日であれば「20年以内」となりますので住宅ローン控除の築年数要件を満たします。
もし所有権移転日が6月25日になってしまったら、築年数は「21年」になりますので、要件を満たさないということになります。
たった1日の違いで、住宅ローン控除の利用の可否が分かれてしまうのです。
物件価格やローンの借入額、消費税課税の有無にもよりますが、
10年間で200万~400万円の減税のチャンスを失ってしまうということです。

これは大きいですね。

もしも購入を検討されている物件が築年数ギリギリの物件だとしたら、上記のことを頭に入れておいて下さい。

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<中古住宅購入時の税制上の注意点> 2019.11.17

中古住宅を購入する場合、新築住宅と比べて次のような事柄に注意しなければなりません。

①建物の物理的状況(補修や設備の取り替えが必要かどうか)
②建物の法的状況(既存不適格や違反建築、建ぺい率・容積率の超過など)

②に関しては重要事項説明をよく確認することである程度の状況は把握できるでしょう。
①はなかなか判断しにくいと思いますが、建物の築年数や使用状況、改装履歴、
空き家になってからの年数などによって大きく変わります。
ある程度老朽化した建物であれば、それなりの改装費用を見積もっておく方が無難でしょう。

さて、そういったモノ自体に関わる事柄以外にも、中古住宅購入時には気を付けるべきポイントがあります。
ここでは、税制上の優遇措置に関しての注意事項をご紹介します。

住宅購入に関係する税制上の優遇措置には、以下のようなものがあります。

A 住宅借入金等特別控除(通称:住宅ローン控除)
B 住宅取得資金等贈与の非課税特例
C 相続時精算課税制度(贈与者が60歳未満の場合)

Aの住宅ローン控除は一番有名ですが、住宅ローンを組んで住宅を購入した場合、
年末時点のローン残高の1%が10年間所得税・住民税から控除されるという仕組みです
(購入物件や時期によって限度額、年数は異なります(以下の特例も同様))。
Bは、住宅購入資金を両親や祖父母からもらった場合、一定額までは贈与税がかからないという特例です。
Cは、両親や祖父母から2500万円までは一旦非課税で贈与を受けることができ(超えた分は20%の贈与税がかかります)、
相続発生時にその贈与分を精算して相続税を計算するという仕組みです。
相続財産の先渡しと考えれば分かりやすいかもしれません。
贈与する側が60歳以上でないと使えない制度ですが、例外として住宅取得資金であればこの年齢条件は無視できます。

いずれも共通する条件として、

・住宅を購入・建築するための資金であること
・その住宅に期限までに住むこと
(Aは取得の日から6ヶ月以内かつ12月31日時点で継続して住んでいること、BCは贈与を受けた翌年の3月15日まで)

などが挙げられます。
他にも、所得の制限や年齢条件、他の特例との併用の可否など、
詳細条件が定められていますので、利用を検討する場合は事前に確認が必要です。

ここで特筆すべきは、購入・建築する住宅の条件です。
まずは以下をご覧ください。

ア、登記簿上の床面積が50㎡以上240㎡以下で、床面積の二分の一以上が自己の居住用であること
(A、Cには床面積の上限規定がありません)
イ、建築後20年(耐火建築物の場合は25年)以内であること
ウ、イの年数を超過していても、耐震基準適合証明書があるもの

床面積も注意が必要ですが(マンションの場合はパンフレット面積と登記簿面積が異なるので特に)、
それ以上に気を付けるべきは築年数です。
木造で築20年を超える物件や、鉄筋コンクリート造のマンションで25年を超える物件の場合、
基本的にABCの特例措置は適用できないものと考えておくべきです。
耐震改修工事をしていて、耐震基準適合証明を取得している場合は(ウ)の条件を満たしますが、
現実的にはそういった物件は稀でしょう。

さらに、所有権を移転する際の登録免許税にも影響があります。

売買による所有権移転登記の登録免許税の税率は通常2%ですが、
一定の条件を満たす住宅用家屋については0.3%に軽減されます。
この「一定の条件」というのは、まさに上に挙げた(ア)(イ)(ウ)の条件なのです。
登録免許税は「固定資産税評価額×税率」ですので、仮に建物の評価額が1000万円だとしたら、17万円の差が生まれます。
また、ローンを借りる場合に抵当権を設定しますが、
それにかかる登録免許税も通常は0.4%、軽減措置適用物件なら0.1%と差があります。

このように、築年数次第で税制上の特典が受けられるかどうかが大きく変わります。
中古住宅にも魅力的な物件はたくさんありますが、
もし特例ありきで住宅購入を検討しているのなら、この点は特に注意しましょう。

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<連生団信は必要か?> 2019.6.28

住宅ローンを組む際に「団体信用生命保険(団信)」という保険を付けることはご存知の方も多いでしょう。
フラット35など団信が任意の住宅ローンもありますが、民間金融機関の住宅ローン商品では団信は必須です。
団信とは何かを一言で言うなら、債務者(住宅ローンを組んだ人)が
死亡した場合に住宅ローンの返済がチャラになる(保険金で賄われる)という保険商品です。
死亡以外にも、ガンや脳卒中、急性心筋梗塞(いわゆる3大疾病)を保障するもの、
生活習慣病を保証するものなど、商品によって保障内容は様々です。

住宅ローンの組み方を考えるうえで、単独名義での借り入れ以外に、
夫婦がそれぞれの名義でローンを組む方法、さらには夫婦の連名で借り入れする方法(連帯債務)もあります。
夫婦それぞれがローンを組む場合、団信の保障は当然保険事故があった方の名義のローンにしか適用できません。
連帯債務の場合、団信割合をはじめに決めておく必要があり、
保険事故が起こったときにはその割合でローン残高が圧縮されます。

具体例をご覧ください。

(それぞれの名義でローンを組む場合)
夫 借入:1500万円
妻 借入:1500万円

夫が亡くなった場合 →夫名義の1500万円のローンはなくなる
           妻名義の1500万円のローンはそのまま残る

妻が亡くなった場合 →夫名義の1500万円のローンはそのまま残る
           妻名義の1500万円のローンはなくなる

(連帯債務でローンを組む場合)
借入:3000万円
団信割合 夫8:妻2 に設定したと仮定
夫が亡くなった場合 →ローンのうち、8割は保険で返済(残高600万円となる)

妻が亡くなった場合 →ローンのうち、2割は保険で返済(残高2400万円となる)

ということになります。

さて、ここからが本題です。
連帯債務の場合、金融機関によっては夫婦連生団信という商品を選択することができるケースがあります。
先程の具体例で置き換えると、以下のようになります。

(連帯債務でローンを組む場合)
借入 3000万円
団信は「連生団信」を選択
夫が亡くなった場合 →ローンはすべてなくなる

妻が亡くなった場合 →ローンはすべてなくなる

つまり、主債務者と連帯債務者のどちらに保険事故があった場合でも、ローンはなくなるという仕組みです。

一見すると、素晴らしい商品だと思えるでしょう。

しかし、連生団信を選択するには、保険料の負担(ローン金利に上乗せ)が必要です。

仮に、上乗せ金利が0.25%だとすると、3000万円の借り入れでは、
7.5万円の保険料を支払うのと同じということになります。

通常の団信と連生団信を比較してみましょう。
分かりやすいように通常の団信の割合を「夫10:妻0」とします。
また、借り入れ額は3000万円とします。

(通常の団信)
団信の追加負担:なし
夫が亡くなった場合 →ローンはすべてなくなる

妻が亡くなった場合 →ローンはすべて残る

(連生団信)
団信の追加負担:年額7.5万円
夫が亡くなった場合 →ローンはすべてなくなる

妻が亡くなった場合 →ローンはすべてなくなる

ということは、連生団信は

「年額7.5万円で妻の死亡保険3000万円に入っている」

という状況とイコールだということです。
(厳密に言うと、ローン残高は毎年減っていきますので、逓減定期保険と同じ仕組みです)

もし、年額7.5万円よりも安い保険料で同額の死亡保険が確保できるのであれば
(死亡以外にもガンなどを保障する連生団信もあり、保障内容の比較も必要ですが)、
その保険に加入する方が金銭的なメリットはあるでしょう。

さらにいうと、連帯債務者にそこまでの保障が必要かどうか見極めることも大事です。

例えば、

(通常の団信)
団信の追加負担:なし 妻に1500万円の定期保険(保険料年額3万円)
団信の割合 夫10:妻0
夫が亡くなった場合 →ローンはすべてなくなる

妻が亡くなった場合 →ローンはすべて残るが、1500万円の死亡保険を受け取れる
           (ローンを繰上げ返済したら残額1500万円になる)

ということも可能です。
さらに、生命保険料控除を活用することが出来れば、節税効果も生まれます。
(団信の保険料は生命保険料控除の対象にはなりません)

連生団信を考えるうえでは、

・追加保険料の額と保障内容のバランスがとれているか
・他の生命保険でより有利なものはないか
・そもそもそれだけの保障が必要か

という観点で検討すると良いでしょう。

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<不動産投資は「不労所得」か?> 2019.4.21

不正融資や違法建築などの問題が取り沙汰されたこともあり、不動産投資のブームは落ち着いてきた感があります。
物件自体もここ数年で大きく値上がりしていますので、利回りが悪くなっていることもその一因でしょう。
それでも、銀行預金や債券利回りなどと比べると、まだ不動産投資の魅力は失われたわけではありません。
実際、不動産投資に興味を持っている方は多く、これから新たに不動産投資を始めてみたいという相談を受けることもよくあります。

そんな中、皆さん異口同音に仰るのが、

「不労所得が欲しい」

という希望です。

相談者はサラリーマンなど別に本業をお持ちの方がほとんどです。
そしてその多くは生活に困っているわけではありません。
ただ、おこづかいとして今の収入に数万円でもプラスになる副業が欲しいということです。

1、不動産を購入する
(できるだけ持ち出しで支出したくないので、全額借り入れする)

2、家賃収入で返済し、差額を手元に残す
(返済が月3万円だとしたら、月5万円くらい家賃がとれればOK)

3、入居者管理などの手間はすべて不動産管理業者にまかせる

だいたいお話を聞いていると、このような図式をイメージされています。
多少違いがあるとすれば、手元に残す金額の大小くらいでしょうか。

実際に入居者が付くかどうかという点に関し、すでに賃借人が居る物件(オーナーチェンジ)、
もしくは不動産業者が借上げしてくれる物件(サブリース)ならその心配もない、と考えるのも大体共通しています。

購入時の諸経費を全く考えていない方もいますが、物件価格の1割程度の諸経費を想定し、
それもあわせて借り入れするつもりという方もいます。

こういう条件ならどうでしょう。

物件価格:600万円
諸経費:60万円(仲介手数料、登記費用、ローン関連経費など)
オーナーチェンジ、現行賃料月額5万円(表面利回り年率10%)
ローン条件:利率1%、期間20年、借入額660万円、返済月額30,353円

単純に考えると、

1、持ち出し資金なしで購入可能(全額借入)
2、月に2万弱手元に残る(すでに入居者が居るので安心)
3、管理は丸投げ

となるかもしれません。

金額が大きくなっても同じです。例えば、

物件価格:1億2000万円
諸経費:1000万円(仲介手数料、登記費用、ローン関連経費など)
サブリース、現行賃料月額80万円(表面利回り年率8%)
ローン条件:利率1%、期間20年、借入額1億3000万円、返済月額597,863円

表面利回りが多少悪くなっても、月20万円は手元に残せそうですね。

さて、月20万円の不労所得が見えてきました。
あなたならこれに投資しますか?

ゴーサインを出す前に、以下の点について考えて下さい。

1、ランニングコストを把握していますか?
 (固定資産税、火災保険、共用部にかかる水道光熱費など)
2、管理会社に払う管理費と、管理の内容を把握していますか?
 (管理費、定期清掃費、定期点検費(貯水槽やEVなどがある場合)など)
3、修繕費のことは考えていますか?
(入居者入替時の修繕、入居中の設備トラブル、大規模修繕など)
4、オーナーチェンジの場合、次の入居者は同条件ですぐに見つかりそうですか?
 (賃料の相場や市場動向を把握しているかどうか)
5、サブリースの場合、契約内容を把握していますか?
 (賃料の見直し(切り下げ)は何年毎?サブリース業者は潰れない??)
6、そんなに借り入れできますか?
 (借り入れ条件がもっと不利になる可能性は?)
7、物件価格は適正ですか?
 (他の諸条件に惑わされて、高掴みしていませんか?)

6で挙げた借り入れができなければ、そもそも購入できませんので問題ないでしょう
(不正融資の問題はこのブレーキが利かなかったことにあります)。
しかし6さえクリアすれば、他の点はあとから気が付くケースもあります。

・ランニングコストを引いたら、手元にお金が残らない(むしろマイナスになる!)
・修繕に費用が掛かりすぎる
・入居者がすぐに出て行って、次が決まらない
・サブリース条件を一方的に改悪された(もしくは解除された)

など、数年経ってから後悔することになるかもしれません。

何故そんなことが起こるのでしょうか。

・物件を買うときに騙されたから
・管理会社がしっかりしていないから
・銀行が注意してくれなかったから

それが原因でしょうか?

たしかに、そういった要素が多少なりともある場合もあります。
しかし、根本的な原因は、本人が買う前によく考えなかったからです。

なぜ考えないのかと言うと、「不動産所得=不労所得」という思い込みがあるからです。

これが根本的な原因です。

これから不動産投資をお考えの方にぜひ知っておいて欲しいことは、
不動産投資は不労所得ではない、ということです。

物件価格の相場、賃貸市場の相場を知ることはもちろん、
賃貸経営に関する知識、物件選定の目利、修繕費などのシミュレーション、
不動産業者や管理会社との付き合い方、銀行との付き合い方など、気を付けることはたくさんあります。
これは購入前に限った話ではなく、購入後も常に考えなければなりません。
つまり、「賃貸経営をする」という意識が必要なのです。
無論、管理会社に管理を任せていれば、入居者の入れ替えやトラブル対応などは直接しなくてもいいでしょう。
しかし、賃貸経営のかじ取りをするのは所有者本人なのです。

不動産は正しく向き合えば魅力のある投資対象です。

しかし、借り入れであろうと大きな金額が動くことは間違いありません。
だからこそ、言われるがままでなく、自分自身で判断をするようにしてください。

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<医療費控除を忘れずに> 2019.1.13

年が明けて確定申告の時期が近づいてきました。

会社員など確定申告の義務がない人は我関せずかもしれませんが、
確定申告することで税の軽減、還付が受けられる場合があります。
住宅ローン控除を初めて使う場合(1年目)や、ふるさと納税でワンストップ特例を使わない場合、
さらには医療費を一定以上支払った場合がこれにあたります。
住宅ローン控除やふるさと納税の場合は、ど忘れ以外に申告漏れは起こりにくいかもしれませんが、
医療費控除は意識していないと見落としてしまうことがほとんどです。

医療費控除とは、前年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費の自己負担額が10万円
(総所得金額が200万円以下の場合は総所得金額の5%)を超える場合、
超えた分が所得控除されるという仕組みです(上限は200万円)。

例えば、医療費の自己負担額が20万円だとしたら、

20万円-10万円=10万円

が、医療費控除の金額になるので、

①所得税率10%の方なら、10万円×10%=1万円
②所得税率20%の方なら、10万円×20%=2万円

住民税 10万円×10%=1万円

で、合計は

①2万円
②3万円

の節税になります。

「医療費を10万円も払ってないよ」という方もいらっしゃるでしょう。
確かに、一人で10万円を超えるというのはハードルが高いかもしれません。
しかし、「自己または自己と生計を一つにする配偶者やその他の親族」の医療費を合計できますので、
家族の人数が多い場合には意外と医療費がかさんでいるケースもあります。

平成29年度以降は健康保険等の保険者(協会けんぽ、など)から送られてくる
医療費通知(医療費のおしらせ)を確定申告に利用できるようになっていますので、
従来よりも申告書作成の手間が軽減されました。
(医療費の領収書は提出する必要がなくなりましたが、5年間は保管義務がありますので、捨てないようにしましょう。)

節税額が大きくないので蔑ろにしがちですが、確定申告書を1時間で作成できる方なら、

「時給 数千円~数万円」

と考えられるかもしれません。

領収書を残していない方は来年のために、今年の分からきっちり保管しておくことをオススメします。

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<ふるさと納税と確定申告> 2018.12.2

年末が近づくと駆け込みで節税意識が高まるようで、
節税に関する質問が増えてきます。
なかでも身近なキーワードが、「ふるさと納税」というもの。
総務省が返礼品への介入をしたせいで以前より魅力は減りましたが、
それでもなお節税策としては有効です。

「ふるさと納税しましたか?」

こう質問したとき、

「確定申告が面倒なのでしてません」

という回答が返ってくることがしばしばあります。

給与所得者は通常、確定申告する必要はありません。
(年収2000万円以上は確定申告が必要ですが)
住宅ローン控除を受ける最初の年度や、その他の控除を受ける場合、
副業している場合や、申告の必要な投資をしている場合、
不動産売却益がある場合等は、確定申告が必要です。

ふるさと納税もこういった確定申告が必要なケースだと
勘違いされていることが多いのですが、実際はそうではありません。
自治体へ寄付をするときに申請書を提出すれば、
確定申告なしでふるさと納税を利用することができます。

これを「ワンストップ特例制度」といいます。

ワンストップ特例には利用条件がありますが、それは

1、寄付先の自治体が5ヶ所以内であること
2、都度申告書を提出すること

というものです。

複数の自治体に寄付をすること自体は問題ありませんが、
その数が6ヶ所以上になると確定申告が必要になります。

ふるさと納税を取り扱うサイトなどでは
寄付をするときに特例を利用するかどうか選択することができ、
特例の利用を希望すると後日申請書が送ってきます。
これを提出することで確定申告なしでふるさと納税することができるのです。

注意点として、ふるさと納税以外の理由で確定申告する義務のある方は、
ワンストップ特例を利用することができません。
この場合は確定申告書の中で寄付金控除の申請をしましょう。

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<賃貸物件の火災保険> 2018.9.22

前回に引き続き、火災保険のお話です。

賃貸物件に入居する際、火災保険に加入することが入居条件になるケースがほとんどです
(保険商品の名称は保険会社によって様々ですが、ここでは火災保険と表記します)。
一度でも賃貸契約をしたことのある方なら、これはご存知のことでしょう。

しかし、この火災保険が何を目的としたものであるかを知らない方は意外と多いように思います。
借主だけでなく、貸主も借主の加入する火災保険の内容を知らないということもあります。

「借主が火災保険に入っているのだから、私(貸主)は火災保険に入らなくてもいいのでは?」
ということを言われることもよくあります。

ここで整理しておくと、

貸主の加入する保険=「建物」を目的とした保険

借主の加入する保険=「家財」を目的とした保険+「借家人賠償責任保険」

と、なります。
(ちなみに所有物件に自分が居住するときは、「建物」と「家財」の両方に火災保険をかける必要があります
(強制ではありませんが、保険事故が起こった際に困る可能性があります)。)

賃貸物件で火事などの保険事故が起こった場合、借主の保険では家財しか補償されません。
借主に責任のある保険事故で建物にダメージを与えた場合、
「借家人賠償責任保険」が付帯されていますので、その範囲内で保険金請求が可能です。
他方、借主に責任のない保険事故の場合、建物は貸主の保険で対応するしかありません。
台風による被害や隣家からの延焼などがこれに該当します。

これも簡単に整理すると、

借主に責任のある保険事故  
  建物:借主の保険(借家人賠償)
  家財:借主の保険(家財)

借主に責任のない保険事故  
  建物:貸主の保険(建物)
  家財:借主の保険(家財)

となります。
もちろん、保険が下りるか下りないかは保険商品の内容や免責事項をよく確認する必要がありますが、
大雑把に言うと上記のようになります。

つまり、賃貸物件は貸主も借主も適切な保険に加入することが肝心なのです。

借主の保険は貸主あるいは管理会社の指定する商品であるケースが多いのですが、
保険の内容(保険金額はいくらで、どういった場合に保険金が下りるか、地震保険はついているか、など)はよく確認しておいて下さい。
家具をぶつけた、盗難にあった、洗濯機から漏水した、など、日常のトラブルも保険で解決できる可能性もあります。
せっかく保険料を払っているのですから、保険金の請求漏れがないようにしましょう。

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<住宅総合保険の内容を把握していますか?> 2018.9.17

大雨、台風、地震など、今年は特に大規模な災害が続いています。
災害に見舞われた場合、身の安全を確保することが最も大切であることは言うまでもありません。
そしてその後は生活をいかに再建していくかという課題に直面します。
この段に至り、金銭面の問題が顕在化してきます。
そういった不測の事態に対応するために、保険という制度があるのはご存知でしょう。
しかし、保険に加入していたとしても、
どんなケースで保険金が下りるのかを正確に把握されている人は少ないのではないでしょうか。

例えば、建物所有者が加入する「住宅総合保険」というものがあります(名称は保険会社によって異なります)。
一般的には「火災保険」と言われますが、この保険の中身を把握していない方が非常に多いように感じます。
それ以前に、火災保険に入っているかどうかすら把握していないこともあるようです。

ローンを組んで住宅を建築、あるいは購入する場合、
ローンの貸し手である金融機関が住宅総合保険への加入を強制しますので、まず保険に入っていると考えて問題ないでしょう。
現在は保険期間が最長10年ですので、期間満了時に更新しなかったり、
途中で解約した場合はもちろんこの限りではありません(2015年以前は35年の長期保険がありました)。
一方、住宅を現金で建築、購入した場合や、ローン返済が終わっている場合、
親の代ないしそれ以前から所有している古い住宅などの場合、保険に加入していないことも考えられます。
誰かに聞くなり、記憶をたどるなり、保険証券を探すなりして、保険に入っているかどうかを確認する必要があります。

保険に加入していることを把握出来たら、次に補償内容を確認しましょう。

「火災保険」という名称から、火災時にのみ保険金が下りると思っている方が少なくありません。
しかし、落雷や爆発、また台風などの風災、あるいは雪災などで建物がダメージを受けた場合にも、保険金が下りるケースがあります。
また、浸水被害(水災)で保険金が下りる保険商品もあります。
火災、落雷、爆発、風災、雪災などは基本保証の範囲に入っていることが多いのですが、水災は任意で付け外しできます。
水災を担保するかどうかで保険料が大きく変わりますので、加入時には悩むポイントですが、
住宅の立地や状況などから、自己責任で判断しなければなりません。
ハザードマップなどをよく確認して検討してください。

火災保険には、「地震保険」を付帯することができます(地震保険は最長5年ごとの更新)。
地震保険でカバーできるのは地震による被害ですが、直接的なものだけでなく、地震による津波や火災なども保証の対象になっています。
地震を原因とする火災は地震保険に入っていないと保障されません。
この点も勘違いが多いので注意が必要です。

上記の他にも、漏水による水濡れ被害、車などが衝突してきたことによる被害、
盗難、家具をぶつけたりと不注意による被害などに対応する保険商品もあります。
また、賠償責任保険が付帯されている場合もあります。
さらにはそれぞれのケースで免責金額が決まっていたり(「免責金額5万円」だとしたら、5万円までは自己負担)、
最低損害額が規定されているものもあります(「損害額20万円以上」の場合は損害が20万円未満の場合は保険金が下りない)。

こういった細かな補償は加入時に選択できるものも多いのですが(どれをつけて、どれをはずす、免責金額をどうする、など)、
実際は保険屋、あるいはローンを担当する金融機関や
購入時に関わる不動産屋に勧められるがまま加入しているということも少なくありません。
住宅を購入する時というのは、あれこれ考えることも多く、
また書かなければならない書類も多いので、どうしても保険などはおざなりになりがちです。
しかし、保険の目的は「加入すること」ではなく「万一の場合に損害を補てんしてもらうこと」です。
そのためには、どういう場合に保険金が下りるのか、ということを把握するのは大変重要なポイントなのです。

今一度、保険証券を見直して補償内容を把握するとともに、その補償が不足していないか、
あるいは他の保険と重複して過補償になっていないかをチェックしてみてください。

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<住宅取得等資金贈与の非課税特例について> 2018.8.3

お金を贈与すると贈与税が発生します。
贈与税の税率は高く、不用意にお金をもらったりすると、
後で多額の贈与税を納めなければならないなんてことになるケースもあります。

とはいえ、普段なら、贈与税がかかるほどの金額をもらうことはそうそうないでしょう。
しかし、住宅を新築する際や購入する際に、親や祖父母から援助を受けるのは珍しくありません。
住宅自体が安い買い物ではありませんので、援助を受ける金額も数百万といった単位になります。

この時、なにもしなければ贈与税が発生してしまいます。

仮に、両親から500万円の贈与を受けた場合、

500万円 - 110万円(基礎控除) = 390万円
390万円 × 15% -10万円(控除額) = 48.5万円
(税率と控除額は贈与税率の即算表をご確認ください)
(直系尊属(親や祖父母)からの贈与と、それ以外からの贈与で税率は変わります)

上記のように48.5万円、約1割弱が税金として持っていかれてしまうのです。

ここで、「住宅取得等資金贈与の非課税特例」を利用すると、700万円までは非課税で贈与を受けることが可能になります。
(質の高い住宅(省エネ、耐震、バリアフリーなど、一定の基準を満たす住宅)の場合は1200万円まで)
(いまのところ、平成31年3月31日まで)
特例の適用要件は省略しますが、要件を満たしたうえで翌年確定申告が必要になります。

この特例を適用すると、上記の場合は税額が0円になりますので、48.5万円まるまる節税できるということになります。

ちなみに、110万円の基礎控除は別枠で計算できますので、

700万円 + 110万円 = 810万円

までは、実質非課税で贈与可能なのです。

さて、これに関して受けた質問が、

「この特例は父親から700万円、母親から700万円、合計1400万円まで非課税になるの?」

というものです。

質問者の場合は父母だけの例でしたが、この理屈がまかり通るなら、
祖父母4人+両親から700万円ずつ、合計4200万円でもOKということになってしまいます。

これは残念ながらできません。

贈与は受贈者(もらう側)目線で考えますので、もらう側の非課税枠が700万円(プラス基礎控除)ということです。
父母から別々にもらうとしたら、合計金額が700万円(プラス基礎控除)を超えると贈与税の課税対象になってしまいます。

この非課税特例は上手に活用すれば非常に有効な節税アイテムです。

是非正しく理解したうえで有効活用してください。

(なお、当該制度について別のコラムもご参照ください)
<住宅取得等資金贈与の非課税特例:贈与のタイミング>

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<不動産を相続したとき考えること③> 2018.6.19

前回は「空き家にしておく」ケースの問題点を、事例をもとに紹介しました。

今回は別の事例を使って、「1-3 空き家にしておく」から「2 売却する」への転機について考えてみましょう。

相談事例は、下記のようなものです。

「将来的に自分たちが利用することもないから、いずれ売却しようと考えている。
ついては、一番いい時期(高く売れる時期)に売却したいが、いつがいいか?」

相続が起こってからしばらくそのままにしておいた土地建物を持つ方が、何かのきっかけでこういう相談に来られることがあります。
「1-3 空き家にしておく」の位置に居ながらも、いずれはアクションを起こさないといけないと考えているのでしょう。
相談に来るか来ないかは別として、潜在的にこのポジションにいる人は多いでしょう。

さて、質問の内容は明確で、相談者の気持ちはよく分かります。
至極当然な話です。しかし、答えようがないことも事実です。

「「この株は絶対に上がります」と言う人がいたら、その人は詐欺師です」という回答をします。

株も不動産も同じく、将来の値動きは分かりません。
様々な要素から未来予測をすることは可能でしょうが、予測の当たりはずれに責任を持つ人はいません。
売却して数年後に振り返ったとき、あの時売っておいてよかったということもあれば、もうちょっと持っていたらよかったということもあるでしょう。
これは結果論です。

確実に言えることは、保有期間が長い程コストがかかる、管理の手間がかかる、ということです。
また、相続した空き家の譲渡所得から3000万円を控除することができる、
「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除特例(以下、空家特例)」を利用する場合は、
相続開始から3年後の年末までという期限があります。

ちょっと具体的な数字で考えてみましょう。

(相続物件の概要)
・空家特例が使える物件
・年間保有コスト10万円
・取得費は不明
・長期譲渡所得に該当する物件
・売却時の登記費用は3万円と仮定

この物件が今なら4000万円で売れるとします。
すると、手取りは次のようになります。

4000万円-136.08万円(仲介手数料)-3万円(登記費用)=3860.92万円(売却後手取り)

(3860.92万円-200万円(概算取得費)-3000万円(空家特例控除))×20.315%(所得税・住民税・復興特別所得税の税率)=134.2658万円(税金)

3860.92万円-134.2658万円=3726.6542万円(税金支払い後、手取り)

となり、約3726万円手元に残ります。

これが、5年後1割アップの4400万円で売れたとしましょう。すると、

4400万円-149.04万円(仲介手数料)-3万円(登記費用)=4247.96万円(売却後手取り)

(4247.96万円-220万円(概算取得費))×20.315%(所得税・住民税・復興特別所得税の税率)=818.28万円(税金)

4247.96万円-818.28万円=3429.68万円(税金支払い後、手取り)

となり、最終手取りは約3429万円です。

保有コストが5年分合計で50万円かかっていますので、実質は3379万円ということです。

仮に売値が1割上がったとしても、手元に残るお金は減っていることが分かります。
もしも値段が現状維持だとしたら、計算過程は省きますが、最終手取りは約3117万円、保有コストを考慮すると3067万円になります。
税金はコワイですね。

このように、読めない相場を読もうとするよりは、税制面での優遇措置を利用できないか検討したりコストを極力抑えるようにしたりと、
実現可能な切り口から攻めていく方が賢明でしょう。
無論、空家特例が使えない物件で、建物の価値も償却しきっているような物件の場合、
保有コスト以外の金額は(相場が変わらないという前提であれば)変わらないこともあるでしょう。
こういった物件の場合、物件価格が上がったときには手取りが増えることも考えられます。
物件や自身の状況などを総合的に考えることが必要です。

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<不動産を相続したとき考えること②> 2018.6.16

前回は相続した不動産を保有する場合についてお話ししました。

今回もその続きですが、「1-3 空き家にしておく」についてもう少し掘り下げて考えてみましょう。

前回お話ししたメリット、デメリットはある意味共通認識で、とくに目新しい話ではありません。
そして空き家のまま保有している人の多くがすでに理解していることです。
デメリットを理解したうえで、なお現状維持している人は、どのような悩みを抱えているのでしょうか。
実際の相談事例をもとに考えてみましょう。

「故人(被相続人)の意思として、亡くなってからしばらくは売らずに置いたままにして欲しいと言われた。
その意思を尊重したいのでしばらく保有しているが、売るとしたらどのタイミングがいいのだろうか?」

前提として、この方は全くお金に困っていませんので、保有コストは気にならないとのことです。
そして自分で管理できるくらいの近距離に住んでいます。

ハッキリと「故人の意思だ」というケースは多くありませんが、相続人が故人の意思を忖度して現状のまま保有するというケースは良くあります。

こういう事例では、正直言って模範解答はありません。
もしも故人が「1年間、3年間」など期限を切ってくれているのなら、それが正解でしょう。
そうでなければ、49日が終わった後、100ヶ日が終わった後、1周忌が終わった後、3回忌が終わった後など(仏式の場合ですが)、
区切りのいいところがそのタイミングと言えるかもしれません。
実際、1周忌が終わってから売りたい、というような相談を受けることもよくあります。
これは気持ちの問題ですので、相続人が納得するタイミングが正解なのでしょう。

とはいえ、いつまでも空き家で置いておくことが故人にとっていいことだとは限りません。
自分が住んでいた家が何年も放置されて朽ちていく姿を、果たして故人は喜ぶのでしょうか。
自分が使っていた家財道具が埃まみれになり、草木が伸び切り、近所の人から煙たがられる家になるのを、どう思うでしょうか。

いや、自分が月一回でも行って、掃除や換気、草木の手入れをしているから大丈夫、という人もいます。
いずれそこに移り住むという明確な考えがある場合は別として、それはいつまで続けられるのでしょうか。

「10年くらいは面倒を見ていたが、自分も歳をとって体もしんどくなって、とても面倒見切れなくなって、結果この5、6年放置している」
という方から相談を受けることもあります。

たとえ自分で管理していたとしても、コストが気にならないにしても、結局いつかまた「売るか、貸すか」の選択肢を突き付けられるのです。

そして空き家にしていた期間が長い程、建物の価値も下がりますし、今までのかけたトータルコストも膨らんでいくのです。

結論を言うと、ゴールのないまま保有をするのは、故人にとっても自分にとってもマイナスだということです。
相続が起こったときに考えるべきは、感情面での区切りの時期だと言えるでしょう。
それが、前述のような法要のタイミングでも構いませんし、それ以外でも構いません。
適切に物事を進めていく方が、かえって故人の為になると考えて下さい。

なお、自分の子供が将来その家に(もしくはその土地に新築を建てて)住むという「願望」を語る方もいます。
子供の年齢や意思によっては有り得る話ですが、
結果としてそうならないパターンをしばしば見ている立場としては、あまり願望を前面に出すのもどうかと思うことがあります。
子供には子供の意思があるでしょうから、よくよく相談の上検討した方がいいでしょう。

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<不動産を相続したとき考えること①> 2018.6.14

相続で得る資産は、現預金、有価証券、不動産に大別することができます。
このうち、現預金と有価証券についてはその取扱いに困ることはあまり考えられませんが、
不動産に関しては「どうしたらいいのか分からない」という相談を受けることがよくあります。
そこで今回は、不動産を相続したときの考え方についてご紹介したいと思います。

まず、不動産を相続した場合、方向性は大きく分けて2つあります。

1 保有する
2 売却する

保有を選択した場合、さらに次のような選択肢があります。

1-1 居住する
1-2 貸す
1-3 空き家にしておく

これを順に確認していきましょう。

1-1 居住する
相続した家屋に居住する、という分かりやすい利用方法です。
はじめから同居していた場合はそのまま何もする必要はありません(相続登記などは別として)。
別のところを借りて住んでいた場合は、賃貸住宅から所有物件へ転居することになります。
別の持家に住んでいた場合は、相続物件に転居した後、持ち家を貸す(1-2)か、
空き家にしておく(1-3)、売却する(2)、のいずれかの選択肢に当てはめることになります。

1-2 貸す
相続物件を賃貸に出すという方法です。
賃貸借における貸主(家主)の立場を経験されたことのある方ならノウハウを持っているでしょうから、
躊躇なくこの選択肢を選ぶことができるでしょう。
そうでない場合は、まずどこかの不動産会社に相談することをオススメします。
適正賃料の査定から、入居者の募集、入居審査、契約書の取り交わし、入居後のトラブル対応、更新時・退去時の手続きなど、
まったく知識のない状態ではなかなか難しいのが現実です。
また、賃貸に出すにあたってリフォームをする必要があるかないかも判断しなければなりません。
ことさらに費用をかけるのはオススメできませんが、老朽化で劣化が激しい場合や長期間放置しておいた場合など、
住むにあたって不具合が出そうな時はあらかじめ修繕しておく方が望ましいと言えます。
入居後に修繕しなければならない場合、スピード勝負になるのでゆっくりと相見積もりを取れないこともあります。
貸しに出す前であれば、自分のペースでゆっくり検討することもできますので、心配な箇所は前もってリフォームしておきましょう。

なお、親戚や友人知人に貸すから不動産業者を挟む必要はないと言って、個人間で賃貸契約を締結されることもあります。
きちんとした契約であれば問題ないのですが、よく知った仲だから大丈夫だということで適当な契約書にしたり、
そもそも契約書を交わさずに入居させたりするのは非常に危険です。
はじめの約束と違って家賃を払ってくれない(もしくは金額が違う)、1年間の約束だったのにいつまでたっても明け渡してくれない、
勝手に違う人に貸している、など、トラブルになってから相談に来られるケースもありますが、
ことが起こってからの対応では時間も費用も掛かりますし、相手方との人間関係、信頼関係もズタズタになります。
たとえ親戚や友人知人が相手だったとしても、またたとえ賃料がゼロ(使用貸借契約)であったとしても、
無用なトラブルを未然防止するために、プロに間に入ってもらって契約することをオススメします。

1-3 空き家にしておく
積極的にこの選択肢を選ぶ人は少なくても、結果としてこの位置に留まっているケースは最も多いのではないでしょうか。

・片づけるのが面倒だから
・思い入れがあって遺品を整理・処分できない
・なんとなく後回し
・貸したら返ってこないのではないか
・賃借人とトラブルになるのがイヤ
・リフォームするお金がない
・賃貸のノウハウがなくてどうしたらいいか分からない
・先祖伝来の土地だから売りたくない
・子供が将来住むかもしれないから置いておこう
・売るタイミングがわからない
・いますぐ売ったり貸したりしないといけないほどお金に困っていない

上記のような理由が複合的に重なり合って、結局手つかずで放置してしまうのです。
ここで、空き家にしておくことのメリットとデメリットを確認しましょう。

<メリット>
・いつでも自己使用、賃貸、売却へ方向転換できる
(選択肢の留保)

<デメリット>
・建物の老朽化が加速する
・保有のコスト(税、保険など)がかかる
・特定空き家に指定されれば固定資産税等の負担が増える

メリットらしいメリットはありませんが、しいて言うなら選択する権利を留保しておくことができるといったことでしょうか。
反対にデメリットは明確で、コストに関するものと、老朽化に関するものです。
金額にもよるでしょうが、お金に困っていなければコストは容認できる範囲だという人が少なくありません。
他方、老朽化に関しては自分だけの問題では済まないケースがあります。
庭の草木が隣地や道路へ越境してクレームがくることもあれば、瓦などが落ちてヒトやモノに損害を与える可能性もあります。
前者は定期的に自分で庭の面倒を見る、あるいはコストをかけて業者に手入れさせるという方法で回避できます。
後者は、賠償保険に加入するほか、建物の定期的なメンテナンス等をする必要があります。
自分で動く場合は時間と労力が、人にさせる場合はお金がかかるのは言うまでもありません。
とくに理由もなく惰性で保有し続けるのは、デメリットの方が大きいと言えるでしょう。

以上、保有する場合の3つのパターンの概要をご紹介しました。
長くなりそうなので、次回に続くということで、今回は一旦これで終わりにします。

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<住宅ローン控除の居住要件> 2018.5.17

住宅ローンを組んで住宅を購入、あるいは新築する場合、
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)による税金の還付は家計にとって非常に重要な要素になります。

購入時期や購入物件の内容によって控除限度額に違いはありますが、平成30年度中であれば、

消費税課税対象の物件:最大40万円
認定住宅の新築等:最大50万円
消費税課税対象外の物件:最大20万円

が、最大10年間にわたって還付(控除)されます。

この控除を受ける場合の主な条件として、下記の項目が挙げられます。
(詳細は国税庁HPを参照してください)

①合計所得金額が3000万円以下
②床面積が50㎡以上、1/2以上を居住の用に供していること
③戸建て(木造)なら築20年以内、マンション(RC)なら築25年以内、もしくは耐震適合証明を取得している物件
④住宅ローンの借入期間が10年以上あること
⑤取得後6ヶ月以内に入居し、適用を受ける年度の12月31日まで引き続き居住していること(居住要件)

さて、それではこんなケースはどうなるでしょう。
(実際の相談事例です)

・家族構成:夫婦+子供2人
・現在賃貸物件に入居中で、今度新たに新築住宅を建築予定
・新築住宅は年末(12月)に完成予定
・新築住宅は妻の実家付近にあり、現在の住居とはかなり距離がある
・夫は仕事の関係でしばらく新築住宅には転居できない(住民票も移せない)
・子供も保育園等の都合があり、しばらくは現在の賃貸物件に居住する(住民票も移せない)

子供が小学校に上がるタイミング等を見計らって、生活の拠点を新築住宅に移す(夫は単身赴任)という計画です。

この場合、住宅ローン控除は受けられるのでしょうか。

新築完成後、仮に誰も住まない(もったいないですが)とすると、居住要件を満たしませんので、ローン控除は受けられません。
しかし、家族の誰かが住んだとしたら居住用物件になりますので、ローン控除の対象となります。
この家族というのは、同一生計の家族を指しますので、例の場合では夫か妻か、子供かの4人のうち誰か、ということです。
もしも夫や妻の両親等を扶養している場合は、両親でも構いません。
ただし、将来的には本人(この例では夫)も一緒に住む予定であるということが前提になります。
夫や子供が転居できないとしても、妻が一人先に居住するという形を取れば、ローン控除を受けることができます。
その際、確定申告時に提出する住民票の写しは、居住者である妻の分になります。

これは形式上単身赴任のケースとして扱われます。
上記の例では入居前からの単身赴任ですが、入居後に単身赴任するケースでもローン控除は引き続き受けられます。
家族みんなで転勤についていく場合は、居住していない期間はローン控除の対象となりませんのでご注意ください
(手続きを取ればローン控除期間を凍結し、再入居後に再開することは可能です)。

なお、居住の用に供するというのは、単に住民票を移しておけばOKということではありません。
実態としてそこに住んでいることが必要です。
少なくともライフラインの開栓くらいはしておいた方が無難でしょう。
税務署がいちいちそんなこと(居住実態)を調査しに来るかどうかは分かりませんが、
何かの拍子に居住していないことがバレた場合は追徴課税の対象となる恐れがありますのでご注意ください。

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<住宅購入と頭金③> 2018.5.14

前回に引き続き、住宅購入における頭金についてのお話です。

参考までに、
1回目は、「頭金としていくら使っても大丈夫なのかをまず考える」
2回目は、「頭金なしでも購入できるが、返済額が家計に見合っているかに注意する」
という結論でした。

換言すると、住宅購入における頭金の金額はそれ自体の多寡が重要なのではなく、
頭金を払った後の貯金額やローン返済額と家計のバランスが重要だということです。
フルローンやオーバーローンという一見危なそうなローンの組み方でも、決して問題のない場合もありますし、
反対に全額現金購入したとしても家計上よろしくないケースも考えられるのです。

では、頭金を入れる事にメリットはあるのでしょうか。
以下、3つのポイントを確認しましょう。

1、住宅ローンの借り入れ条件が有利になる場合がある
2、手付金等の支払いに金策が不要
3、含み損になるリスクが減る

まず1ですが、住宅ローン審査では自己資金をどれだけ入れるかということも審査対象となります。
フルローンやオーバーローンと比べて、銀行側の貸し倒れのリスクが少ない分、有利な適用金利を引き出すことができます。
反対に言うと、フルローンやオーバーローンを希望する場合は、
多少金利が高くなる可能性があることを知っておく必要があるでしょう。
また、そもそもフルローンに対応していない住宅ローン商品もありますので、頭金がないよりはあるほうが選択肢が増えます。

2に関しては、取引の流れを考えれば想像できるかもしれません。
住宅購入にあたっては、まず売買契約をして手付金を支払います。
その後、住宅ローンの本審査が無事通った後に借入金で残代金を支払うことになります。
仮にオーバーローンで話を進めるとしても、
一旦手付金(及び不動産業者によっては仲介手数料の半額程度を契約時に受領するケースもあります)等の支払いは先にしなければなりませんので、
手元にまったくお金がないとしたら何らかの金策をしなければなりません。
こういった場合は、手付金を低額にしてもらうとか、仲介手数料の支払いを決済時にしてもらうなどの融通をきいてもらえるように、
不動産業者・売主に事前に相談する必要があります。
自己資金を入れる場合には、これらの煩わしいやり取りを省くことができますので、これもメリットと言えるでしょう。

3は、購入後の話になります。仮に、4000万円の住宅を4400万円のローンを組んで購入したとしましょう。
購入後、なんらかの事情ですぐに物件を売却しなければならなくなった時、物件の市場価格が購入時と同じ4000万円だとしたら、
超過する借入金(400万円)は現金で用意しなければ抵当権の抹消が出来ないことになります。
売却時にも仲介手数料等の経費がかかることを考えると、
4000万円で売却するには550万円ほどの持ち出し資金が必要だということです。
買ってすぐなら上記のような計算になりますが、数年経つとローン残高は徐々に減りますので、状況はマシになるかもしれません。
しかし、売却価格自体も経年によって減価が想定されることを考えると、「売却価格-売却経費>ローン残高」になるまでには時間がかかるでしょう。
この点はオーバーローン、フルローンのリスクとして認識してください。
一方、購入時に自己資金を入れていた場合は、買ってすぐに売却することも可能です(損得で言えば損になることは間違いありませんが)。
もしもの場合に融通が利くのは自己資金ありの場合といえるでしょう。

以上、頭金を入れるメリットについてご紹介しました。
これらは手元にお金がないケースにはぴったり当てはまるのですが、そうでないとしたら覆すことも可能です。

仮に自己資金2000万円ある方がオーバーローンを考えている場合、

1、自己資金はあるんだと銀行にアピールすること(見せ金)で、オーバーローンでも有利な条件を引っ張ることも可能
2、資金はあるので金策は不要、ローン実行時に立て替えた資金を回収できる
3、含み損が売却を妨げる場合には自己資金で穴埋めすればよい

ということです。

もしも住宅ローン控除が受けられ、かつローン金利がローン減税以下(1%以下)であれば(ローンにかかる諸経費は考慮しないとして)、
借入額を当初大きくしておく方がいいというケースもあります。
そして10年経過後に繰り上げ返済するという方法もありますし、
団信を生命保険戦略の一環として考え、あえて繰上げ返済せずにおいておくという方法も考えられます。

このように、自己資金があるのに敢えてフルローン、オーバーローンにすることも考えられます。
迷わせるようなことを言っているかもしれませんが、これらもまた事実なのです。

少しまとめてみましょう。

〇自己資金がない(物件価格の1割以下)場合
・フルローン、オーバーローンのリスクを知った上で、購入すべきか検討するとよい
・ローン返済額と家計のバランスをよく考えること

〇自己資金がある場合
・頭金を入れる事のメリットをよく理解すること
・頭金を敢えて入れない戦略を考えることも可能
・頭金投入後の貯蓄残高とローン返済額、家計のバランスを総合的に検討すること
・もしもの場合に対応できる柔軟性をもった家計設計を心がけること

頭金は多いに越したことはありませんが、いくら投入すべきかということについては、

・家計の状況
・ローン条件
・税制優遇措置
・生命保険戦略

などの観点から、総合的に判断することが重要なのです。

これから住宅購入を検討される方は、是非参考にしてください。

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<住宅購入と頭金②> 2018.5.11

前回は、「現状であればいくら頭金として使っても大丈夫なのか」ということをまず考えるべきだと結論付けました。

今回は、「頭金は実際にどれだけ必要なのか」ということを考えてみましょう。

前回の冒頭部分でも述べましたが、一昔前は物件価格の2割3割は自己資金として用意しなければならないという時代もありました。
これは、銀行(その他の金融機関も含む)が物件価格の8割までしか融資しませんよ、というのが主流だったからです。
4000万円の家を買いたいとしても銀行は3200万円までしかかしてくれない、
となると諸費用(物件価格の1割とします)を含めた残り1200万円は嫌でも自分で用意しなければなりません。
貯金や親からの援助でかき集める必要があるのです。

しかし、現在はそういう環境ではありません。
当然銀行によって違いはありますが、物件価格の100%まで融資してくれるケース(フルローンと言います)も珍しくありませんし、
もっと言うなら諸費用まで全て面倒見てくれる場合(オーバーローンと言います)もあります。

先の例で言うと、4400万円すべてを住宅ローンで調達することも不可能ではないのです。

もちろん、次のようなことには注意が必要です。

1、利用しようとしている金融機関がフルローンやオーバーローンに対応しているか
2、ローン利用者の属性(収入、勤続年数など)や返済比率(返済月額と収入のバランス)、信用情報、健康状態に問題はないか
3、購入を検討している物件の担保価値は借入額に見合っているか

3は例えば中古住宅の場合等が想定されますが、銀行が評価する担保価値と販売価格が乖離している場合等に問題になることがあります。
オーバーローンに対応している金融機関に新築住宅の購入に対する住宅ローンを持ち込んだ場合、
1と3はまずクリアするでしょう。あとは2の問題さえクリアすれば、諸費用込みですべて借り入れすることが可能です。

前回のAさんの例で言うと、オーバーローンした場合は次のようになります。

物件価格: 4000万円
諸費用:   400万円
合計:   4400万円

頭金(自己資金):0万円
住宅ローン:4400万円
 変動金利(当初0.775%)、30年での借り入れ、ボーナス払い無し
返済月額:137,019円

月収:     50万円(ボーナスは無し)
支出:住宅費14.7万円(ローンと固定資産税の月額の合計)
   その他  30万円
   貯金  5.3万円
貯蓄:   1300万円

住居費の負担は増えますが、貯金は手つかずで維持することができます。

Aさんの場合はまとまった金額の貯金がありますので、頭金を入れても入れなくてもどちらのパターンでも考えられますが、
仮に貯金がなかったとしてもオーバーローンであれば家を購入することはできるのです。
例として、Bさんのケースを考えてみましょう。

Bさん(30代)
月収:    30万円(ボーナスは無し)
支出:家賃   7万円
   その他 22万円
   貯金   1万円
貯蓄:    50万円

物件価格:2000万円
諸費用:  200万円
合計:  2200万円

頭金(自己資金):0万円
住宅ローン:2200万円
 変動金利(当初0.775%)、30年での借り入れ、ボーナス払い無し
返済月額:68,509円

購入後の家計は次のようになります。

月収:    30万円(ボーナスは無し)
支出:住宅費  8万円(ローンと固定資産税の月額の合計)
   その他 22万円
   貯金   0万円
貯蓄:    50万円

購入価格こそAさんのケースより下がりますが、自己資金なしで購入することは理論上可能なのです。

上述した1~3の条件さえ満たせば、頭金はなくても家は買えるということです。

という事情を不動産会社の営業マンは熟知していますので、
往々にして無理なローンを組ませて購入を迫るということがあるのです。

前回の結論でも触れましたが、家計を防衛することが最優先課題です。
頭金なしで家を買うこと自体は問題ないとしても、月々の返済額は家計に見合っているか、
もしもの場合に対応できる余裕が家計にあるかを十分検討する必要があります。
金融機関の審査で見られる返済比率は、利用者の家計を考えているわけではありません。
家計の中身は人それぞれですが、審査は表面的な数字だけで判断されます。

不動産会社の営業マンは売るのが仕事です。
銀行マンはお金を貸すのが仕事です。
あなたの家計を守るのは、あなたの仕事なのです。

決断は急がずにゆっくりと考えて下さい。
そして自分で処理しきれない場合は、ファイナンシャルプランナーにご相談ください。

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<住宅購入と頭金①> 2018.5.8

住宅購入を検討する時、多くの方は住宅ローンを利用します。
この時に悩むポイントの一つとして、
「頭金はいくら用意すればいいか」
という問題があります。

一昔前であれば、
「頭金は物件価格の2割+諸費用分必要だ」
というふうに言われていました。

仮に購入諸費用(仲介手数料、登記費用、印紙代等)が物件価格の1割だとすると、
トータルで物件価格の3割は自己資金として用意する必要があることになります。

仮に購入を検討している物件の価格が4000万円だとしたら、
頭金が1200万円必要だという計算になります。

なかなかハードルが高いですね。

頭金が多いとその分メリットもあるのですが、
現実的にそこまでの資金を用意できないということもあるでしょう。
また、頭金として貯金を取り崩すことで、家計が危険水域になるケースもあります。

例えば、次のようなケースをご覧ください。

Aさん(30代)
月収:    50万円(ボーナスは無し)
支出:家賃  10万円
   その他 30万円
   貯金  10万円
貯蓄:  1300万円

毎月10万円の貯金ができている健全な家計で、貯金残高も1300万円あるとします。
(支出の細かい項目は関係ないのでその他としてまとめました)
このAさんが次の条件で家を購入するとしましょう。

物件価格:4000万円
諸費用:  400万円
合計:  4400万円

頭金(自己資金):1200万円
住宅ローン:3200万円
 変動金利(当初0.775%)、30年での借り入れ、ボーナス払い無し

月の返済額は99,650円ですので、現在の家賃とほぼ変わりません。
ただし、固定資産税の負担が発生します。
仮にこれを年額12万円とすると、月額換算で1万円になります。
すると、家計は次のように変化します。
(住宅ローン控除は考慮しません)

月収:    50万円(ボーナスは無し)
支出:住宅費 11万円(ローンと固定資産税の月額の合計)
   その他 30万円
   貯金   9万円
貯蓄:   100万円

月の収支はまだまだ貯金ができる健全な状態ですが、貯金が一気に100万円になってしまいました。
家計がこの後大きな変化をしないのであれば、年間100万円ずつは貯金が増える計算になりますので、問題はありません。

しかし、以下のような状況を考えてみたらどうなるでしょう。

1、Aさんには2人の子供が居た
2、Aさんが突然失業した

1の場合は子供の年齢によっても状況は変わりますが、教育費の増大で今後の生活費が増えるかもしれません。
そうなると、貯金が予定通りできないかもしれません。
また私立学校への進学を希望する場合に、入学金や授業料としてまとまったお金が必要になると、
貯金はたちまち底をついてしまいます。

2のケースでは、一時的だったとしても収入が途絶える可能性があります。
そうすると、当然当面の生活費を貯金から捻出する必要がありますが、現状の貯金では2ヶ月半で破綻してしまいます。

いざという時のことを考えると、月収の半年分から一年分の貯金は残しておきたいところです。
また、教育費などで使う可能性のある資金に関しては、別にしておいておく必要があります。

仮に、Aさんが2~3年のうちに教育費として月々の生活費とは別に100万円必要だとすると、

100万円(使う予定の資金(教育費))+50万円×6(半年分の蓄え)=400万円

は手元に置いておきたい金額です。

すると、住宅用の資金として使えるのは900万円になりますので、
ローン借入額を3500万円に増やすか、購入予算を減らすかしなければなりません。
(借入額を3500万円にすると、返済月額は108,993円になります)

このように、頭金を考えるうえでまず注意すべきことは、

「現状であればいくら頭金として使っても大丈夫なのか」

ということです。

家計を防衛することが最重要課題ですので、気を付けて下さいね。

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<家計簿のつけ方> 2018.4.15

ファイナンシャルプランナーに相談したいけれども一歩踏み出せないという方の中には、
「家計簿をつけていないので怒られる(呆れられる)のではないか」
と思われる方もいらっしゃるでしょう。

確かに、ライフプランニングをするうえで家計のデータは必要です。
しかし、実際には家計簿をつけていない方から相談を頂くこともよくあります。
その場合、初回相談で簡単な家計簿のつけ方をお教えしたうえで、
一ヶ月ほど試験的に家計簿をつけてもらってから次のステップに進んでもらいます。

家計簿をつけている方でも、場合によっては同じようにしてもらうこともあります。

というのも、家計簿のつけ方に問題があることが多いのです。

例えば、こんな家計簿(数字は適当です)。

手取り収入     30万円

支出  家賃     8万円
    食費     5万円
    小遣い    3万円
    通信費    1万円
    カード払い  6万円
    使途不明金  2万円
    貯蓄     5万円
    計     30万円

金額が適正か否かは置いておくとして、何が問題でしょうか。

答えは、「カード払いの中身が分からないこと」です。

クレジットカードでの決済が増えていますので、カード払いがあること自体は不自然でもなんでもありません。
しかし、食費や住居費といった支出項目と同列に表記するのはおかしいでしょう。
これと似たものに、「引き落とし」という項目を設けている方もいます。
現金払いなのか、カード払いなのか、はたまた銀行引き落としなのか、
これは決済方法の違いであって支出の中身ではないのです。

家計簿をつける場合は、支出項目ごとに金額を記録することが重要なのです。
カード決済をしている場合は、都度支出項目を記録するか、利用明細書を残しておいて後で整理するかすべきでしょう。

上記の例をあるべき姿に置き換えると、下記のようになります。

手取り収入    30万円

支出  家賃    8万円
    食費    5万円
    小遣い   3万円
    通信費   1万円
    水道光熱費 2万円
    消耗品費  1万円
    被服費   3万円
    使途不明金 2万円
    貯蓄    5万円
    計    30万円

「収入 ― 支出 ― 貯蓄 = 0」

となるのが正常で、そうならない場合はどこかにお金が消えていることになります。
(それを便宜的に「使途不明金」と呼んで調整しています)

家計簿をつけるうえでまずやるべきことは、

・決済方法に惑わされずに支出項目ごとに振り分けをすること
・使途不明金がいくら発生しているかを把握すること

です。
この2点さえ押さえておけば、次のステップに進むことができます。

ちなみに、1000円以下の端数は適当に処理しても大勢に影響はありません。
(四捨五入で十分です)
細かくつけ過ぎると途中でイヤになるという性格の人は、ある程度大雑把に考えた方が長続きするでしょう。

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<住宅は「購入」か「賃貸」か、どちらがいい? ③> 2018.4.2

前回は、「住宅は購入すべきか、それとも賃貸で過ごすべきか」という問題を金銭的な損得の面で考えてみました。
結論として、損得計算は前提条件をどうするかによって結果が操作できるので、
それだけを判断材料にするのは意味がないということでした。

では、実際購入と賃貸はどうやって判断すべきなんでしょうか。

結論から言うと、「欲しいと思ったら購入すべき」でしょう。

その際、次の点に注意してください。

・転勤などで遠方へ行く可能性は高くないか?
・近い将来相続などで土地建物をもらう可能性はないか?
・家族構成が変わる予定はないか?

転勤になると、折角購入した家を離れなければなりません(単身赴任の場合を除く)。
不在時に賃貸に出すことも可能ですが、住宅ローンの契約違反(目的外利用)になるリスクや、
地元に帰って来た時に賃借人が退去してくれないリスクを伴います(定期借家契約などで回避する方法はありますが)。
そういった点を十分理解したうえで購入すべきでしょう。
また、相続などで不動産を取得する可能性があり、かつその建物に住めるような場合には、
将来その物件をどうするのか(移り住むのか、売却するのか)といったことも考える必要があります。
とはいえ、いつ起こるか分からない相続をアテにするのも考えものでしょう。
プランニングの一つの検討材料としてとらえるべきです。
また、これから結婚する予定の場合は、立地や間取りといった条件が将来の家族構成に合うかどうか判断できませんので、注意が必要です。
一旦購入して、結婚したら売却(もしくは賃貸に)するという割り切りができるのであれば、問題ありません。

以上の他にも状況によって様々な注意点が考えられますが、重要なのは将来の人生設計(ライフプラン)に合致しているかどうかです。
ライフプランがまだはっきりとしないという時点では、賃貸でいる方が柔軟性があるでしょう。

無論、一旦購入したからと言って、そこを終の棲家とする必要はありません。
必要に応じて買い替えすることも可能です。

住宅は人生の中で一番高額な買い物になるでしょう。
慎重を期すことは必要ですが、臆病になる必要はありません。
状況が整っているのであれば、賃貸に住み続けるよりは早めに購入した方が金銭的負担は少なくなります。

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<住宅は「購入」か「賃貸」か、どちらがいい? ②> 2018.3.30

前回の続きですが、

「住宅は購入すべきか、それとも賃貸で過ごすべきか」

という問題について、今回は「金銭的な損得で考える手法」の功罪について見ていきましょう。

まず、この手の話が好まれるのは、「自分は損をしたくない、少しでもオトクな方法を知りたい」という、潜在的な需要があるからでしょう。
そしてこの需要を満たすための話題作りとしては、非常に有効な切り口なのです。

一方で、本当に意味のある話かどうかは疑問です。
具体例を挙げて考えてみましょう。

<購入の場合の諸条件>
物件価格4000万円
諸費用 400万円
頭金  500万円
ローン 3900万円
(35年、変動金利0.775%、毎月返済額約10.6万円)
固定資産税等負担 年額12万円(35年目まで、36年目以降9万円と仮定)

<賃貸の場合の諸条件>
契約諸経費 30万円
家賃    10万円
更新料   10万円/2年毎

<本人情報>
現在30歳で90歳までの60年間の費用負担をシミュレーション
定年は65歳

<購入の場合>
初回持ち出し金額 500万円
ローン返済総額 4454万円
固定資産税等   645万円
トータル:   5599万円
現役時の年間負担 139.2万円
退職後の年間負担   9万円
(住宅ローン控除は除く)

<賃貸の場合>
初回持ち出し金額 30万円
家賃総額    7200万円
更新料等     300万円
トータル:   7530万円
現役時の年間負担 125万円(更新料案分加算)
退職後の年間負担 125万円(更新料案分加算)

家賃10万円と、ローン返済10.6万円で月々は同じくらいの負担です。
固定資産税等と更新料の負担にも少しの差はあれ、現役時の年間負担額は15万円程度購入時の方が多いのです。
しかし60年の総額では賃貸の方が2000万円くらい負担が大きくなります。

賃貸の条件を見直してみましょう。

<賃貸の場合の諸条件②>
契約諸経費 24万円
家賃    8万円(35年後から7万円に減額と仮定)
更新料   なし

<賃貸の場合②>
初回持ち出し金額 24万円
家賃総額    5460万円
トータル:   5484万円
現役時の年間負担 96万円
退職後の年間負担 84万円

これでようやく60年トータルの金額がほぼ同じになりました。

さて、これを見てどう考えるべきでしょうか。

・賃貸の場合、途中で転居したら家賃が変わるのでは(諸費用も掛かる)?
・そもそも60年も同じ賃貸物件に住んでいられるの?
・ローンの金利が変動なので、ローン支払い総額が上がる可能性があるよね?
・60年も住んでいたら、相当建物は傷むはず。修繕費はいくらかかる?
・70歳で、あるいは80歳で死んだら?もしくは100歳まで生きたらどうなる?

と、細かいことを言い出したらキリがありませんが、どれも正論です。
こういったシミュレーションは仮定条件を決めないと数字が出せませんので仕方ないのですが、
条件次第で結果を操作することが可能なのです。
例えば最初の条件で比較して、「購入の方がオトクです」という結論にもできますし、
②の条件を持ち出して、「金銭的負担はほぼ一緒です」とすることもできます。
あるいはローンの金利を上げたり予算を上げたりして、
「賃貸の方が安上がりです」ということも可能でしょう。
はたして、こういった結論に意味があるのでしょうか。

自分の考える数字に置き換えて、ご自身のライフプラン、キャッシュフローの中で考えるのならまだしも(それでも多くの仮定を前提としていますが)、
一般論としては非常にくだらない話です。

重要なのは、損得ではなく家計が成り立つかどうかで判断すべきだということでしょう。

家計が住居費の負担に耐えうるかどうか、教育費や老後資金といった資金準備をする余裕はあるか、
環境・状況の変化に耐えうる柔軟性があるか、そういった視点で住居費の予算を決め、そこから購入するか賃貸にするか考えて下さい。

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<住宅は「購入」か「賃貸」か、どちらがいい?> 2018.3.27

「衣・食・住」は生活の基盤であり、いずれも重要なテーマです。
「住宅・教育・老後」に関する資金は、人生3大支出と言われます。

両者に共通するのは、「住宅」というキーワードです。

住宅の問題を考える上でよく話題になるのが、

「住宅は購入すべきか、それとも賃貸で過ごすべきか」

ということでしょう。
これは永遠のテーマです。

この問題の切り口として使われるのは、「購入と賃貸で、どちらがオトクか」という、金銭的な損得で判断する手法でしょう。

それ以外の論点では、以下のようなものが見受けられます。

<購入推進派の挙げるメリット>
1、住宅は資産になる(=家賃は払い捨て)
2、ローン支払い後の住宅費負担が少ない

<賃貸推進派の挙げるメリット>
1、人口減少局面において、不動産の価値は下がる
2、賃料は交渉次第でどんどん下げられる
3、住み替えしやすい

1のメリットに関しては、購入派と賃貸派で反対の主張になっています。
将来資産としての価値があるのかどうかは、購入時点では誰にもわかりません。
現在2000万円の土地があったとして、10年後、20年後、30年後に同じ土地がいくらの価格で売れるのかは判断しようもないのです。
人口減少による需給バランスの不均衡から、不動産価格の大幅な値下がり(不動産は無価値になるという極論も見受けられますが)を予言する人もいます。
地方の小都市や過疎化が進む地域では、ある程度この傾向があるかもしれません。つまり地域差があるということです。
建物の価値は年数の経過とともに下がっていくことは否めませんが、住宅地である土地建物の価値がゼロになるということは考えにくいでしょう。
一方で、家賃は払い捨てであるというのは否定できません。5万でも10万でも15万でも、いくら払おうと資産としては何も残らないのです。
この点だけで判断するなら、購入した方がメリットがあると考えられるでしょう。

購入派の挙げる2に関しても、事実です。
ローン支払い後は固定資産税等の租税負担のみ(マンションの場合は管理費、修繕積立金の負担もあります)になりますので、家賃を払い続けるよりも負担が少なくなります。
その分、修繕やリフォームにお金がかかるという指摘もありますが、設備類の取り換えや小修繕は避けられないにしても、
大規模なリフォームやリノベーションは必ずしないといけないものではありません。
予算を考えながら、必要に応じた部分の補修だけで済ませることも可能なのです(手抜き工事の物件を掴まされるというリスクを除けば)。
マンションの場合は管理費等の負担があるかわりに、躯体や共用部分の修繕は管理組合全体で行いますので、
個別の負担は基本的にありません(組合会計が不健全な場合は別として)。

一方、家賃は契約の続く限り払い続けなければなりません。
賃貸派が主張する2のメリットは疑問です。
新規契約時に賃料交渉をすることで家賃が下げられることはあっても、契約中に家賃を下げるのは至難の業です。
長期間契約が継続していて、かつ家主との間に信頼関係が出来ていて、周辺の地価や家賃相場が大きく値崩れしている場合に、
ひょっとしたら減額してくれるかもしれない、という程度で考えておいたほうが良いでしょう。
例え賃料を下げることが合理的に考えて家主にもメリットがあるとしても(退去されて家賃収入がなくなるよりはマシという状況)、
必ずしも合理的判断をするとは限りません。
プライドの高い家主、お金に困っていない家主などは、値切られるくらいなら空けておいた方がいい、という方も多いのです。
昔と違い、借主の方が法的に保護されて強い立場にあります。
また、需要と供給の関係から言っても、借主の方が選ぶ立場にあるということは間違いありません。
しかしその状況を利用して足元を見るような交渉が成功するかどうかは、また別の問題だと考えた方が良いでしょう。

賃貸派が言う3番目のメリットも、限定的に考える必要があります。
確かに、購入してしまった後で住み替え(買い替え)を考えるより、賃貸での転居の方がはるかにラクです。
しかし、それは現役で働いている間だけだと思ってください。
定年後に年金収入のみになったとき、いくら貯えがあったとしても信用力は現役の時よりもはるかに劣ります。
また、連帯保証人を頼める人がいないという状況になると、賃貸契約を断られるケースも増えます。高齢者の契約を断られるケースもあります。
つまり、選択肢は格段に減るのです。
老後は介護施設に入所するというような明確な計画があれば別ですが、通常の賃貸物件を転々とするのは難しくなるかもしれません。
また、引っ越し作業を経験された方ならお判りでしょうが、体力的な負担も大きいでしょう。高齢者になってからの引っ越しはさらに大変です。
上記のような問題点を踏まえ、転々とせずに住み続けるから大丈夫と考える方もいるでしょう。
しかし、家主側の都合で退去を求められることもあります。
とくに老朽化した物件の場合、防災の観点から取り壊しを余儀なくされるなど、思いもしないタイミングで引っ越さざるを得なくなるかもしれません。
こういったリスクも頭に入れておくべきです。

以上、それぞれが主張するメリットについて見てきました。
総合的に言うと、転勤で各地を転々とする方や、購入せずとも相続などで住宅が手に入る見込みの方など以外は、購入するほうがメリットがあるでしょう。
もちろん、タイミングや予算、物件の選び方など、様々な問題があるのは事実ですが、気軽だからと言って考えなしに賃貸を続けるのはもったいないかもしれません。

長文になりましたのでこの辺りで一旦終わりますが、次回は「金銭的な損得」の話をしたいと思います。

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<相続した空家の譲渡所得控除について> 2018.3.26

実務上ご相談の多い項目についてご説明いたします。

「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除特例」

難しいそうな言葉が並べられていますが、 要するに相続物件を売却した時にかかる譲渡所得税が軽減されるという特例です。

適用要件の要点は、

対象者:相続または遺贈により土地建物を取得したもの

対象物件:被相続人(亡くなった方)の居住用建物とその敷地
     (被相続人がなくなった結果空き家になった建物)

適用期間:相続発生時から3年を経過する日の属する12月31日
     かつ、
     平成28年4月1日~平成31年12月31日

条  件:①耐震基準を満たす家屋とその敷地
     ②耐震補強リフォームをした家屋とその敷地
     ③建物を取り壊したあとの敷地
     ①~③のいずれかの物件にあてはまること、
     かつ譲渡価格が1億円以下

です。

これらを満たす場合、譲渡所得から3000万円控除されますので、 3000万円以下で売却した場合は譲渡所得税がかかりません。

例えば、耐震基準を満たさない古家を売却する場合、 売却価格が2000万円として、通常であれば、

(2000万円―100万円(5%(みなし取得費)))×20.315%(長期譲渡所得税・住民税の税率)=385.985万円

となり、手取りは1614万150円となります。
(仲介手数料その他の経費は省略)

これを更地にして特例適用した場合、 解体費が仮に150万円かかったとしても、

(2000万円ー150万円(解体費)-92.5万円(5%)ー3000万円)×20.315%=0万円(マイナスにはなりません)

従って、手取りは1850万円となります。
(仲介手数料その他の経費は省略)

このように、解体費を払ってでも特例適用したほうがオトクな場合もあります。

この場合、売却の目途もなく先に解体すると、次年度の固定資産税が上がってしまうという状況になることもあります。
解体のタイミングには要注意です。

売却の際はどのような方法が最も有効かお考えください。
(ご相談お待ちしています!)

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<不動産所得の事業的規模とは> 2018.3.14

不動産所得が「事業的規模」に該当する場合、以下のような税制上の特典があります。

1、青色申告特別控除の金額が65万円になる(事業的規模でなければ10万円)
2、回収不能の賃料を貸倒損失として必要経費に算入できる
3、賃貸用不動産の取り壊し・除却費用が全額必要経費にできる
4、家族への給与(専従者給与)が必要経費に算入できる

特に1に関しては実質の支出を伴わないので、ありがたい特典と言えるでしょう。

さて、これらの特典が適用される「事業的規模」とは、どのように判定されるのでしょうか。

国税庁のタックスアンサーによると、
「原則として社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうかによって、実質的に判断」
するとしています。

具体的には、
「・貸間、アパート等については、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること
 ・独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること」

と示されており、これを「5棟10室ルール」と言います。

つまり、戸建住宅(貸家)であれば5棟以上、
1棟マンションやアパートであれば10室以上所有・運営していれば該当するということです。

解釈上、貸家は1棟でアパート2室に相当すると考えられますので、貸家3棟と4室のアパート1棟を所有している場合は、

貸家3棟(=6室分) + アパート4室 = 10室

ということで、事業的規模と判断できます。

ちなみに、分譲マンションの1室は「貸家1棟」には該当せず、「マンション1室」になりますので、
分譲マンションばかりに投資している方は、10室分必要になります。

原則論に立ち返って、「社会通念上事業と称するに至る程度の規模」というのは、
例えば部屋数が少なくても多額の賃料を得ているとか、
本業(給与所得や事業所得など)の収入を超えている場合などが該当するでしょうが
(その他、不動産事業にかける時間的、精神的労力の大小なども勘案されます)、
そういった場合は事前に税務署に相談することをお勧めします。

不動産投資をお考えの方は、事業的規模に発展させるかどうかを含め、税務戦略を考えたうえでご検討ください。

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<中古取得した建物の減価償却> 2018.2.26

建物を購入した場合、帳簿上の建物の価値は毎年減価償却によって目減りしていきます。
居住用の資産であれば売却時の譲渡所得の計算に用いる以外関係ないことでしょうが、
投資用の場合は減価償却分を経費として申告できるのでこの点は重要です。

毎年の減価償却費は建物の耐用年数によって償却率が異なります。
(償却率についてはコチラをご参照ください)
耐用年数に関しては、住宅物件では木造が22年、鉄筋コンクリート造が47年となります。

新築で取得した場合の耐用年数はそのままの数値で問題ないのですが、
中古取得の場合はどうなるのでしょうか。
取得時の経過年数を引いた残期間で考えるのでしょうか。
答えは以下のようになります。

法定耐用年数 - (経過年数 × 0.8)= 残年数
(小数点以下切り捨て)

つまり、築10年の分譲マンション(鉄筋コンクリート造)の1室を購入した場合、

47年-(10年×0.8)=39年

となり、償却率は「0.026」となります。
(建物は定額法で計算します)

この物件を1000万円で購入していた場合、

1000万円 × 0.026 =26万円

が、減価償却費として経費計上できるのです。
(年度の途中で取得した場合は月数によって調整が必要ですが、ここでは割愛します)

ちなみに、土地は減価償却の対象となりませんのでご注意ください。

上記の例で土地建物の合計が1000万円だとしたら、
まずは土地と建物の価格を分離し、建物価格に償却率を掛ける必要があります。
(土地建物の内訳は購入時の契約書に記載されているか、
評価証明書の評価額の比率で案分するなどして算出しましょう)


なお、耐用年数を超過している場合は、

法定耐用年数 × 0.2 = 残年数

で計算しますので、木造なら4年、
鉄筋コンクリート造なら9年が残年数となります。


不動産投資で節税を考える際には重要な要素になってきますので、
申告時にはご注意ください。

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<「被相続人居住用家屋等確認書」の取得について> 2018.1.30

被相続人の居住用家屋を相続し、一定の条件を満たす場合は、
譲渡所得から3000万円控除されるという特例があります。
(この特例については<相続した空家の譲渡所得控除について>を参照して下さい)

この特例を利用するためには確定申告をすることが絶対要件です。
その際、添付書類として必要な書類の中に、

「被相続人居住用家屋等確認書」

というものがあります。

これは自治体が発行する書類です。
(京都市の場合は京都市役所の5階で発行してもらえます)

申請してから発行まではおよそ1週間程の時間を見ておくとよいでしょう。
(ちなみに、弊社のお客様の例では申請後即日発行された方もいます)

注意点として、申請書類に不備、不足があると手続きがストップしてしまうことです。
特に、解体して更地渡しというケースでは、
解体の請負契約書と売却時の売買契約書が必要ですが、
請負契約書に記載された期日までに解体できていなかった場合や、
売買契約書に記載された期日までに取引ができなかった場合など、
書類上の日付と実際に行った日付にズレがある場合、
補足書類が必要になります。

また、物件の地番、家屋番号と住所として登録していた
番地が違う場合にも補足書類を求められます。
(住居としては「〇〇町5」で住民票登録していたのに、
謄本上の家屋番号は「〇〇町5-1」だった場合など)

こういうケースでは、規定の必要書類以外に書類が要りますので、
事前に準備しておかないと2度手間になる恐れがあります。

正直、行政の案内に不備があると思うのですが、
この点は国交省に文句を言っても効果はありませんでした。

この特例を使おうという場合は、申請受付までに手間と時間がかかることも考慮して、
なるべく早めに「被相続人居住用家屋等確認書」の
発行手続きをした方が良いでしょう。

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<譲渡益が出たら「ふるさと納税」を> 2017.11.23

相続物件などを売却して多額の譲渡益が出た場合、
支払わなければならない譲渡税の金額もかなり大きくなります。

譲渡税の内訳は、長期譲渡所得の場合、

所得税15.315%(復興特別所得税を含む)、
住民税5%、
です。

例えば、諸経費、取得費を引いた譲渡益が3000万円だったとすると、

所得税として4,594,500円、
住民税として1,500,000円、
の納税が必要です。

同年内にその他不動産の譲渡損と損益通算をする場合以外は、
納税自体を免れることはできません。

ただ、どうせ払わなければいけないのなら、
返礼品がもらえる「ふるさと納税」の制度を活用すべきでしょう。

限度額の計算は割愛しますが、
(総務省HPをご参照ください)
不動産譲渡益がある場合は確実に限度額がアップします。

上記のように3000万円の譲渡益が発生した場合、
単純計算で住民税特例分の枠が30万円上乗せされることになります。

折角なので高額な返礼品を狙ってみるのもいいかもしれませんね。

年末が近づき、忙しくなる時期ですが、
忘れないうちに手続きを済ませておくことをオススメします。

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<小規模宅地等特例の注意点> 2017.11.6

相続財産評価をする際、一定の要件を満たせば
「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
を適用することができます。
(適用条件等は国税庁のHPを参照。)
(なお、以下の記述は居住用の場合です。)

これは限度面積内であれば土地評価を80%減額できますので、
適用できる場合は絶対に活用すべき特例です。
注意点として、この特例を受ける場合は、
相続税の申告書にこの特例を受けようとする旨を記載するとともに、
小規模宅地等に係る計算の明細書や遺産分割協議書の写しなど
一定の書類を添付する必要があります。
つまり、申告が絶対要件になります。

ここで、いくつかのパターンを想定してみます。
(相続財産の価格は相続税評価額、また自宅は特例適用対象とする。
配偶者控除等は考慮しない。)

①相続人:2人 相続財産:自宅土地2000万円 自宅建物:200万円 現預金:1500万円

②相続人:2人 相続財産:自宅土地3000万円 自宅建物:200万円 現預金:1500万円

③相続人:2人 相続財産:自宅土地4000万円 自宅建物:500万円 現預金:3000万円



まず、全てのパターンで基礎控除額は4200万円です。
(3000万円+600万円×2人)
また、相続財産から控除する負債等はないとします。

①の場合、相続財産の合計額は3700万円です。

②の場合、相続財産の合計額は4700万円ですが、特例適用で2300万円となります。

③の場合、相続財産の合計額は7500万円ですが、特例適用で4300万円となります。



①は、相続財産が基礎控除の範囲内ですので、相続税はかからず、申告も不要です。

②は、特例適用後の相続財産が基礎控除の範囲内ですので、
 相続税はかかりませんが、特例を適用するために申告は必要です。

③は、特例適用後の相続財産が基礎控除を越えますので、
 相続税がかかる可能性があります。当然申告が必要です。



①と③は誤解が生じにくい案件ですが、②の場合は注意が必要です。
計算上相続税がかからないとしても、申告しなければ特例は適用できず、
申告漏れを指摘されることになります。
そうなると、本来払わなくていいはずの相続税がかかる他、
無申告のペナルティも課せられる恐れがあります。

②のようなケースに該当する場合は、期限までに必ず申告してください。

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<定年退職後すぐに不動産を売却するなら> 2017.10.21

サラリーマン等の健康保険加入者が定年退職した場合、
健康保険を任意継続するか国民健康保険に加入するかを選択しなければなりません。

任意継続の場合の保険料は、
会社が負担してくれていた分も個人で負担しなければなりませんので、
簡単に言うと2倍になります。
ただし、上限が標準報酬月額28万円とされているので、
所得が高ければ国保より安くなる場合もあります。

具体的な保険料が知りたい場合は、
国保なら市区町村の窓口に問い合わせれば試算してくれますし、
健保なら各都道府県別の一覧表を見ればすぐにわかります。
任意継続は2年間限定ですが、
1年目は前年の所得をもとに保険料が計算されますので、
国保より健保の方が有利ということも多いでしょう。

ただ、退職後なにも仕事をせずに年金支給まで所得が生じないとすると、
2年目は国保の方が有利ということになります。
こういう場合、1年目は任意継続して、
2年目に国保に切り替えるという方法をとることも考えられます。
(可能かどうかは協会けんぽや市区町村に確認が必要です)

一方で、初めから国保に加入する方が保険料を抑えられる場合もあります。
ご自身の所得に応じて保険料を試算の上、決定することが重要でしょう。


と、ここまではよくある話ですが、
退職後すぐに不動産を売却する場合には注意が必要です。

退職する年齢になると、親の年齢もそこそこ高齢になり、
相続が起こる時期と重なることがあります。
そして相続した物件を売却すると、取得時期が古かったり不明だったりして、
税務上の譲渡益が発生することがよくあります。
譲渡所得税・住民税を支払うのは仕方ないこととして、
もう一つ考慮しなければならないのが、国保保険料への影響です。
国保の保険料計算には、譲渡所得も反映されるからです。
(<不動産売却後の国民健康保険料>参照)

タイミングとしてはかなりピンポイントな話ですが、
退職後同一年内に不動産を売却する予定(譲渡益が発生する予定)があるなら、
ぞの点も含めて任意継続するかどうか検討した方がいいでしょう。

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<扶養控除対象者が不動産を売却した場合> 2017.9.16

扶養控除、配偶者控除、及び配偶者特別控除の対象となる方には収入要件があります。
扶養控除の場合は給与収入なら年間103万円までに収まらなければなりません。
配偶者控除、配偶者特別控除は平成30年から基準が変わりますが、
新基準の配偶者特別控除でも200万円を超えると控除はなくなります。
(収入主体者の収入要件もあります。)

何れかに該当する場合は、
それぞれ控除が受けられるように収入を調整することもあるでしょう。

前回のコラムでは
税法の扶養控除等の場合はそういうわけにはいきません。
例え一時的な収入であっても収入が基準額を越えれば、
その年は控除対象者にはならないのです。

具体的な例で整理すると、

専業主婦(orパート等で収入103万円以内)
夫が配偶者控除を受けている
(夫の所得税率は20%とする)
夫の健康保険の扶養家族

が、不動産を売却し、1000万円の譲渡所得が上がった場合

譲渡所得税・住民税 → 203.15万円
その年度の配偶者控除は受けられない → 夫の所得税・住民税10.9万円増
健康保険の扶養家族 → 影響なし

となります。

不動産の売却はそうそう頻繁に行うものではありません。

どこにどんな影響があるのかということを考えながら、
損の無いようにプランニングしましょう。

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<健康保険の扶養家族が不動産を売却した場合> 2017.9.15

専業主婦やパートなどで年間収入が130万円未満であれば、
世帯主の健康保険の扶養家族になることができます。
130万円以上であれば扶養家族の条件から外れてしまうので、
個別に健康保険か国民健康保険に加入する必要があります。
これを一般的に「130万円の壁」といいます。

この問題はパート収入をどの程度で止めるべきかといった議論の際によく話題になりますが、
ここでいう収入とはどういったものが含まれるのでしょうか?

不動産を売却した際の譲渡所得は含まれるのでしょうか??


別のコラムでも触れているとおり、不動産を売却して利益が出た場合は、
譲渡所得ありということで確定申告して納税しなければなりません。
特に購入時の価格が極端に安かったり、
そもそも購入時の契約書を残していないような古い物件、
即ち相続物件の場合はこれに該当するでしょう。
相続物件を売却して利益が出ると、譲渡所得税、住民税として
20.315%(長期譲渡所得として)の税金を納めなければなりません。
仮に2000万円で売却できたとして、
みなし取得費と手数料等の経費が合計200万円だとすると、
1800万円が譲渡所得の額面になり、
その内20.315%が譲渡所得税、住民税になります。

すると、少なくともこの年の所得は
130万円の壁をはるかに超えることになってしまいます。

この場合、健康保険の扶養から外れて
独自に国民健康保険に加入しないといけないのでしょうか??


答えは「扶養の範囲に留まることができる(国保への切替不要)」です。


というのも、上記譲渡所得はあくまでも一時的なものだからです。
一時的な所得であれば、
いちいち扶養から外す必要がないというのが健康保険組合の見解です。
扶養家族の所得調査の際には上申書(申立書)を書く必要があるそうですが、
「不動産売却の為の一時的な収入」ということを書けば大丈夫とのことです。
該当する方は覚えておいてください。

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<譲渡所得の申告時に必要な建物の価格> 2017.8.1

譲渡所得税の計算式は、

(売却価格-取得価格-売却費用)×税率=税額

ですが、このうち、取得価格というのは要するに「買った時の価格」のことです。

これが土地だけなら買った時の価格をそのまま使えば問題ありません。
しかし、土地建物であれば、建物の価格は減価償却が必要になります。

そこで、土地と建物の価格を明確に分離する必要が出てきます。

買った時の売買契約書の記載が、

「土地〇〇万円、建物××万円」

というふうになっていればそれが根拠になりますが、

「土地建物合計△△万円」

の場合は自分で内訳を考える必要があります。

(消費税額が明記されている場合は、
それを手掛かりに建物価格を復元することが可能です)
(例:土地建物3000万円、内消費税45万円(当時の消費税率を3%として)
→建物1500万円)


厄介なことに、この区分方法は税法上の規定がありません。
客観的な根拠に基づいた算出が求められているだけです。

実務上用いやすい方法としては、次の2つが有力でしょう。

①国税庁が公表している建物の標準的な建築価額表を用いる

②固定資産税評価額の比率を用いる


まず①ですが、国税庁が参考資料として建築年と
構造(木造、鉄骨造など)毎に1㎡あたりの単価を公表しています。
この単価に平米数を掛けて建物価格を算出することができます。
仮に平成元年の木造家屋100㎡だとすると、
1㎡単価は123.1千円となっていますので、

12.31万円×100㎡=1231万円

となります。

②は、固定資産税評価額を根拠にする方法です。

例えば、
 評価額  土地1200万円、建物800万円
 購入価格 3000万円
とすると、1200:800 → 3:2 の比率になりますので、

3000万円×2/5=1200万円

が建物価格になります。

①②の方法で算出した建物価格から減価償却費を引いた金額が現在の建物残価になります。
建物より土地の価格を高くした方が譲渡所得の計算上は有利になりますので、
①②のうち、自分に有利な方を選択するとよいでしょう。

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<平成29年度 路線価> 2017.7.3

本日(7月3日)、平成29年度の路線価が発表されました。

大幅上昇した地点やバブル期を越えた地点もあるようですが、
身近な所はどうでしょうか?

と思い、事務所の近所の路線価は毎年推移を見ています。


ちなみに、こういう状況でした。

〇北山通(叡電の線路~白川通)
2011年  245000円/㎡
2012年  240000円/㎡
2013年  240000円/㎡
2014年  240000円/㎡
2015年  240000円/㎡
2016年  245000円/㎡
2017年  255000円/㎡

〇白川通(北山通~北に一つ目の信号まで)
2011年  210000円/㎡
2012年  210000円/㎡
2013年  210000円/㎡
2014年  210000円/㎡
2015年  210000円/㎡
2016年  215000円/㎡
2017年  220000円/㎡


ここ2年ほどはじんわりと上っていますね。

ただ住宅地の中に入ると、同期間ほぼ横ばいの状態です。

少なくとも路線価においては、この地域とバブルは無縁のようですね。

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<つなぎ融資と団体信用生命保険> 2017.6.26

ローンを組んで完成済みの住宅を購入する場合、
決済時に住宅ローンを実行して、そのお金で残代金を支払うことになります。
契約時の手付金を除けば、この一回でお金の清算が終わります。

縁起でもない話ですが、この直後にローン契約者が死亡したとすると、
団体信用生命保険(以下、団信)から保険金が下りてローン残高はゼロになります。
残された家族には、ローン支払いの心配なく住居が確保されるのです。
(免責期間等の諸条件にはご注意ください)

一方、新築住宅を建築する際、支払の一般的な流れは次のようになります。

<前提条件>
土地を更地で購入(価格1500万円、手付金1割)
建物をハウスメーカーで建築
(価格税込み2000万円、着手金3割、中間金3割、残代金4割)
(諸経費は省略します)

1、土地 契約 手付金支払い  150万円
2、土地 決済 残代金支払い 1350万円
3、建物 着手金支払い     600万円
4、建物 中間金支払い     600万円
5、建物 残代金支払い     800万円

住宅ローンが実行される時期は銀行によってマチマチですが、
仮に物件(建物)引き渡し時に実行だとすると、
5の時にようやく融資されるのです。

とすると、それまでの間に2700万円は
自己資金で用意しないといけないのでしょうか。

用意できるなら何の問題もありませんが、
そうでなければ銀行から「つなぎ融資」を受けることになります。

仮に、手付金を自己資金で支払ったとすると、
2、3、4はつなぎ融資で支払い、5の時に住宅ローンに切り替わる
(住宅ローンでつなぎ融資の分を精算する)ことになります。

無事に5が終わってから契約者が死亡した場合は、
完成物件の場合と同じく団信でローンが消えるのですが、
5の前ならどうなるでしょう?

基本的に団信はおりません。

資金的に余裕がない状態を前提とすると、
1の後、2の前なら手付放棄(もしくは違約金)で
踏みとどまるのが賢明かもしれません。
2の後、3の前(建築請負契約の前)なら、
土地を売ってつなぎ融資分を返済するしかありません。
もっとも、つなぎ融資の返済をすぐに迫られるので、現実的には厳しい状況です。
3以降は最悪です。
中間金等の支払いが滞れば建物は中途半端な状態で工事が中断し、
銀行からはつなぎ融資の返済を迫られます。
家も手に入らないわ、借金は残るわ、という悲劇です。

こういう状況を回避するために、住宅建築を検討される場合は、
その期間だけでも掛け捨ての定期保険に入っておいた方がよいでしょう。

また、住宅ローンの実行時期やつなぎ融資の条件、団信の諸条件等は、
納得いくまでしっかりと確認しましょう。

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<数次相続と相続登記> 2017.6.12

相続が発生した場合、不動産の名義を相続人に変えるのが原則です。
しかし実際は、相続登記をしないまま放置していることもよくあります。
この状態で相続人が亡くなると、さらに次の相続人へと相続されることになります。

例えば、

父A ― 母B

子C

という家族構成で、Aが自宅の土地建物の名義人になっているとします。
ここで、最初にAが亡くなり、一年後Bも亡くなったとし、
Bの没後Cがこの土地建物を売却するためには一旦自分の名義に変えなければなりません。

原則論で言うと、Aが亡くなった時点で名義をB(もしくはBCで共有)に変え、
その後Bが亡くなった時点でC名義に変えることになります。

この場合、(ここでは一旦Bの単独名義にしたとして)
B名義への相続登記時に登録免許税を支払い、
後日C名義に変更する際もまた登録免許税を納めなければなりません。

一方、Bが相続登記をしないまま亡くなった場合、
A→(B→)Cという数次相続の手続きになりますので、
登録免許税の支払いは1回分で済みます。

ただし、数次相続には適用要件があり、
中間者(この場合B)が単独でないといけません。
ご注意ください。
(このケースでは1次相続でBCの共有にすると適用できなくなってしまいます。)

相続人が複数いる場合は、争いの防止という観点からも、
都度相続登記するに越したことはありません。

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<新築住宅購入後の固定資産税> 2017.5.13

不動産を所有していると毎年固定資産税、都市計画税(以下、固都税)がかかります。
(後者はかからない地域もあります)

賃貸住まいから住宅を購入する時に、 生活資金計画の一部として見落としてはいけない点の一つです。

固都税は1月1日時点の所有者に課税されますので、
新築住宅を購入した(建築した)場合は翌年の4月にはじめて納税通知書が届きます。
(購入年度の固都税(土地分)は日割清算して売主に支払うことが通例です)
2~3月に住宅ローン控除の為に確定申告をし(当制度を利用する場合のみ)、
4月に固都税の通知が来て、
当面の収入支出の予定が立つのがこのタイミングではないでしょうか。

さて、ライフプランニング、特に今後の収支予測を立てる場合、
キャッシュフロー表というものを作成することがあります。
当然、住宅ローン控除の還付金は収入、固都税は支出という形でこれに反映させます。

この時、住宅ローン控除を受けられる期間は皆さん大体把握されているのですが、
他方、固都税の変化を見落とす(知らない)方はかなり多いのです。

この場合の変化というのは、
土地評価の見直しによる増減(いわゆる評価替え)のことではなく、
数年後にやってくる確実な「増額」のことです。

というのも、新築住宅の場合、
当初3年間は建物の評価が2分の1になっているのです。
(3階建て以上の耐火・準耐火建築物は5年度分)
(認定長期優良住宅の場合はそれぞれ5年、7年の期間)
*適用条件は省略

具体例を挙げます。

土地分 固都税合計    50000円
建物分 固定資産税    56000円
    都市計画税    24000円
合計          130000円

というのが初年度の内訳だった場合、軽減措置終了後は、

土地分 固都税合計    50000円
建物分 固定資産税   112000円
    都市計画税    24000円
合計          186000円

となります。

いかがでしょう。

この事実を認識したうえでライフプランを考えられているでしょうか?
初年度でギリギリの収支計算になっていませんか?
ローンの返済やローン控除の還付金のみに気を取られていると、
意外なところで足を掬われるかもしれませんね。

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<不動産譲渡所得と損益通算> 2016.11.4

不動産を売却して譲渡益が出れば課税対象になります。
他方、譲渡損が出れば当然ながら課税はされません。

ところで、この譲渡益・譲渡損は他の所得と相殺できるのでしょうか?

所得は10種類に分類されますが、他の種類の所得と合算・相殺することを損益通算といいます。
例えば、会社勤めの方が副業として分譲マンション1室のオーナーをしている場合、
1年間空室のままだとしたら管理費・修繕積立金・固定資産税・
火災保険等の経費分がマイナスになってしまいます。
仮にマイナスが50万円、給与所得が500万円とすると、

500万円-50万円=450万円

と、不動産所得のマイナス分を給与所得から控除できます。

では、話を戻して譲渡損益はどうでしょうか。

答えは、他の所得とは損益通算できません。
(マイホームの譲渡損の場合、一定要件を満たせば損益通算できる特例もあります)
しかし、不動産譲渡所得同士であれば損益通算は可能です。

例えば、相続で複数の不動産を取得したとしましょう。
どちらも長期譲渡所得に該当する物件とします。

① 土地 売却価格:2000万円 売却経費:100万円 取得価格:不明
② 土地 売却価格:1500万円 売却経費: 80万円 取得価格:3000万円

この場合別々に考えると、

① 2000万円-100万円-100万円(概算取得費)×20.315%=365.67万円
② 1500万円-80万円-3000万円×20.315%=0円

となり、①は約366万円もの税金がかかります。
しかし同一年度に売却すると損益通算できますので、

(2000万円+1500万円)-180万円-3100万円×20.315%=44.693万円

となり、300万円以上も節税できるのです。
この場合の年度というのは、1月1日~12月31日です。
複数の不動産を売却する場合は、
売却(決済)のタイミングでかかる税額が変わることがありますので、
十分ご注意ください。

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<譲渡所得の計算方法:長期と短期の区別> 2016.10.10

前回の譲渡所得の計算に関して、
短期保有と長期保有で税率が違うことに触れました。

短期は39.63% (所得税、住民税、復興特別所得税の合計)、
長期は20.315%(所得税、住民税、復興特別所得税の合計)、

と、約2倍の差があります。

この時の短期、長期は具体的にどう判別するのでしょうか。

これは非常に簡単なのですが、

「売却日の属する年の1月1日時点で、所有期間が5年を超えている」

なら長期、越えていないなら短期となるのです。

例えば、

 売却日  平成28年7月1日
 購入日  平成23年7月1日

なら、平成28年1月1日時点では所有期間4年6か月なので、短期譲渡となります。

これで譲渡益がでるのなら、平成29年になってから売却した方が手取りが多くなる可能性が高いですね。

ところで、前回触れた概算取得費のケースですが、
購入時の契約書や領収書がない場合には概算取得費を用いるため、
大幅な譲渡益が出る可能性が高いという話でした。

現実的には、自分で買った不動産の契約書類は残しているケースが多いのですが、
相続物件の場合には契約書類を紛失していることが多いのです。

つまり、相続物件の売却時に概算取得費を用いた計算が行われることが多いということですね。

さて、こんな場合はどうなるのでしょう。

 購入日   不詳
 相続取得日 平成25年4月1日
 売却日   平成28年7月1日
 購入金額  不明
 売却金額  2000万円

登記簿謄本を見れば、被相続人(亡くなった人)がいつ物件を取得したかがわかります。
もしそれが平成23年以降なら、短期譲渡となります。
逆に、平成22年以前であれば、長期譲渡となります。

「相続してから5年以上ではなくて、被相続人が取得してから5年以上(取得日は引き継ぐ)」

と考えるのです。
なので、仮に取得日が昭和40年月日不詳などと書かれていても、
長期保有は確認できますので、

2000万-100万円(概算取得費)-80万円(売却費用)×20.315%=3,697,330円

が納めるべき税額となります。

相続の場合は、5年超えのケースが多いですね。
(そうでない場合は数年内に買っているということなので、
契約書類等が残っている可能性が高いです)
それでも、税額も決して安くはないので、
ほかの特例等が利用できないか売却前によくよく確認しましょう。

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<譲渡所得の計算方法> 2016.10.10

不動産を売却し利益が出た場合、利益部分に対して税金がかかる。
これを譲渡所得といいます。

譲渡所得は分離課税なので、給与所得などとは別に税額計算するのですが、
計算自体はいたって簡単で、

(売却価格-取得価格-売却費用)×税率=税額

となります。

要するに、売った金額から買った時の金額、
売却にかかる費用(仲介手数料など)を差し引いた残額に税率をかけるのです。
(建物は減価償却分を考慮する必要があります)

バブル時代ならまだしも、売却時に利益がでるケースはそう多くないかもしれません。
しかし、取得費が不明な場合はどうなるのでしょう。

この場合、概算取得費として売却金額の5%で計算することになります。

例えば、取得費不明の物件(長期保有、自己居住用以外)を
1000万円で売却した場合、売却費用を50万円とすると、

1000万-50万円(概算取得費)-50万円(売却費用)×20.315%=1,820,835円

が、納めるべき税額となります。
短期保有の場合は税率がかわりますので、

1000万-50万円(概算取得費)-50万円(売却費用)×39.63%=3,566,700円

と、倍近くの税額になります。
仮に、買った時の契約書が見つかった(購入金額800万円)としたら、

1000万-800万円(取得費)-50万円(売却費用)×20.315%=304,725円(長期)
1000万-800万円(取得費)-50万円(売却費用)×39.63% =594,450円(短期)

と、税額はぐっと低くなります。
取得費の証明は、売買契約書か売買代金の領収書がないとできませんので、 将来のためにも契約書類は大切に保管しておかなければなりません。
(抵当権設定金額等の傍証で税務署が認めてくれるケースもあるみたいなので、 書類をなくした方も諦めずに税務署に相談しましょう)

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<住宅取得等資金贈与の非課税特例:贈与のタイミング> 2016.9.30

「住宅取得等資金贈与の非課税特例」

これは住宅取得資金を直系尊属(親または祖父母)からもらう場合に、
一定額までなら贈与税がかからないというありがたい制度です。
住宅取得の時期や取得する住宅の質によって限度額は違いますが、
一般的な住宅で、平成29年9月までに契約した住宅については、
「700万円」の非課税枠が使えます。

主な適用要件は、

贈与者(あげる側):父母、祖父母
受贈者(もらう側):1月1日現在で20歳以上の直系卑属で、
当該年度の合計所得が2000万円以下の者
取得物件:床面積(登記簿上の面積)が50㎡以上240㎡以下
     耐火建築物なら築25年、非耐火建築物なら築20年以内、
もしくは「耐震基準適合証明」を取得すること
入居要件:贈与を受けた年の翌年3月15日までに入居(未完成物件は緩和措置あり)

となっています。
贈与のタイミングについては触れられていませんが、
次のような場合は適用できるのでしょうか?

<前提条件>
築10年の木造戸建、床面積100㎡を3000万円で購入予定
親から700万円の援助を受ける

①贈与を受け、契約をし、残金を支払い、入居する

②契約をし、贈与を受け、残金を支払い、入居する

③契約をし、残金を支払い、贈与を受け、入居する

④契約をし、残金を支払い、入居し、贈与を受ける

この場合、①②は適用可能で、③④は適用不可能となります。

というのも、この特例の趣旨は、
「住宅取得資金の頭金を援助してもらいやすくするため」なので、
残代金支払いまでに贈与を受けている必要があるのです。
(契約より後でも決済までならOKのようです)

一旦住宅ローンを組んで、あとから贈与を受けて繰り上げ返済するという場合は適用除外になるのです。

見落としやすい部分ですので、本特例を利用しようという方は十分お気を付けください。

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<年金受給資格改正> 2016.9.26

前々から出ていた話ですが、ようやく閣議決定したようですね。
年金受給資格を取得するための納付期間が、
従来の300ヶ月(25年)から120ヶ月(10年)に短縮されるとのこと。
300ヶ月基準では資格要件を満たさず無年金になっていた人でも、
120ヶ月基準であればハードルは非常に低くなるので対象者は拡大します。

とはいえ、ギリギリ120ヶ月でもらえる年金は、

780,100円×120/480=195,025円(年額)
          16,250円(月額)

にしかなりません。
これが240ヶ月(20年)なら、

780,100円×240/480=390,050円(年額)
          32,500円(月額)

300ヶ月(25年)なら、
780,100円×300/480=487,562円(年額)
          40,630円(月額)

満額でも月額では約65,000円です。
国民年金だけで生活設計するのは不可能に近いでしょう。
年金制度が様々な問題を抱えているのは確かなことでしょうが、
老後の生活設計にとって最も重要な要素であることもまた事実です。
年金受給額、受給開始のタイミング、
退職金を含む退職時の貯蓄、その時の残債、
その他の副収入など、
リタイアメントに関するお金のイメージは一度具体的にしておく必要がありそうですね。

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<不動産売却後の国民健康保険料> 2016.9.23

不動産を売却すると翌年確定申告が必要になります。
このとき、譲渡所得に対する税がかかることは多くの方がご存知の通りです。
(譲渡益が出ていなければかかりませんが(そして申告も不要))
居住用不動産を売却した場合は3000万円の控除が使えますので、 よほどのことがない限り譲渡益とはならないでしょう。
(特例を適用する場合は確定申告必須です!)
これらの所得税・住民税(復興特別所得税)とは別に、 国民健康保険料も上がることには注意が必要です。
国民健康保険料は、所得に連動する部分があり、 譲渡所得が発生すると当然その分保険料に反映されます。
譲渡所得は数千万になることも多いので、
その場合、保険料は上限額(80万円くらい(市町村によって違います))になります。
また、医療費の自己負担割合が2割、1割の方は、3割負担になってしまう場合もあります。

「上記3000万円の特別控除は国民健康保険料の所得計算上控除対象にならない」

という説明をチラホラ見かけますが、 国民健康保険料の所得割の計算上は、特別控除後の所得で計算されますのでご安心ください。
ただ、医療分、後期高齢者支援金分、介護分の算定には控除前の金額が使用されます。
所得割に比べると大した金額にはなりませんが、念のためご注意ください。
ちなみに、健康保険に加入している場合は特に影響ありません。
(被扶養者の場合は、扶養から外れることになるので、注意が必要ですが)

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<相続した空家の譲渡所得控除について> 2017.7.3

実務上ご相談の多い項目についてご説明いたします。

「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除特例」

難しいそうな言葉が並べられていますが、 要するに相続物件を売却した時にかかる譲渡所得税が軽減されるという特例です。

適用要件の要点は、

対象者:相続または遺贈により土地建物を取得したもの

対象物件:被相続人(亡くなった方)の居住用建物とその敷地
     (被相続人がなくなった結果空き家になった建物)

適用期間:相続発生時から3年を経過する日の属する12月31日
     かつ、
     平成28年4月1日~平成31年12月31日

条  件:①耐震基準を満たす家屋とその敷地
     ②耐震補強リフォームをした家屋とその敷地
     ③建物を取り壊したあとの敷地
     ①~③のいずれかの物件にあてはまること、
     かつ譲渡価格が1億円以下

です。


これらを満たす場合、譲渡所得から3000万円控除されますので、3000万円以下で売却した場合は譲渡所得税がかかりません。

例えば、耐震基準を満たさない古家を売却する場合、売却価格が2000万円として、通常であれば、

(2000万円―100万円(5%(みなし取得費)))×20.315%(長期譲渡所得税・住民税の税率)=385.985万円

となり、手取りは1614万150円となります。
(仲介手数料その他の経費は省略)

これを更地にして特例適用した場合、解体費が仮に150万円かかったとしても、

(2000万円ー150万円(解体費)-92.5万円(5%)-3000万円)×20.315%=0万円(マイナスにはなりません)

従って、手取りは1850万円となります。
(仲介手数料その他の経費は省略)

このように、解体費を払ってでも特例適用したほうがオトクな場合もあります。

この場合、売却の目途もなく先に解体すると、次年度の固定資産税が上がってしまうという状況になることもあります。
解体のタイミングには要注意です。

売却の際はどのような方法が最も有効かお考えください。
(ご相談お待ちしています!)


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